社説
郵政改革法案/たなざらしは国益損なう
郵政民営化の見直しを定めた「郵政改革法案」が、中ぶらりんの状態になっている。ねじれ国会で法案成立の見通しが立たなくなっているためだ。
「全国あまねく公平に」を旗印に、郵便事業に限られていた全国一律サービスを、郵貯や簡保にも広げる。そのコストに見合う措置は政府が講じる。当初から変わらない基本路線だ。
その法案はしかし、先の通常国会で廃案となった。参院選の日程を優先させ、会期の延長をしなかったためだ。
先月、政府は法案をあらためて閣議決定した。自見庄三郎金融・郵政改革担当相は「民営化によるひずみの是正は利用者に加え、現場の切実な声だ。今国会での成立に全力を尽くす」と語った。
しかし、参院では民主、国民新の与党は過半数割れしている。対する野党は「郵政の再国有化につながる」などと厳しく批判しており、国会審議の見通しは立っていない。
その一方で、すでに郵政株式売却凍結法が成立しているため、もとの完全民営化路線には戻れない。政府の郵政民営化委員会は、株式売却を凍結している限り、新規事業に進出することには否定的な見解を表明している。
民営化から3年あまり、郵政改革は完全に足踏みしているように見える。加えて、肝心の経営がじり貧になりつつあることも不安を増幅させる。
郵便物などの取扱数は年率3%で減り続けている。宅配市場はヤマト、佐川の2強による寡占化が進み、ゆうパックは苦戦している。また、ゆうちょ銀行の貯金残高は10年前の7割弱の水準にまで落ち込んでいるからだ。
このまま「改革」が不透明な状態で続くと、郵政の経営基盤が取り返しのつかないほど弱体化しかねない。現場で働く社員の士気低下も懸念されるところだ。与野党で論議を重ね、修正が必要なところは修正し、改革を軌道に乗せなければならない。それが、政治の責任というものだ。
公共性を守りつつ、非効率な官業体質は刷新する。収益性を高められる部分は大胆に高める。採算を度外視してでも守るべきサービスは、きちんと守る。筋の通ったものにしなければならない。
郵政事業は暮らしに直結している。だからこそ、安心して利用できる仕組みを練り上げ、国民の幅広い理解を得ることが大前提となる。
ねじれ国会を理由に、停滞させたまま放置することは国益に反する。
(2010/11/08 09:50)
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