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きょうの社説 2010年11月23日
◎渡り鳥合同調査 ふるさとの環境知る契機に
北國新聞社と日本野鳥の会石川、日本鳥類保護連盟石川県支部が合同で実施する野鳥の
生息実態調査が始まった。12月に金沢市で開催される国連の「国際生物多様性年」のクロージングイベント(閉年行事)に合わせ、国境を越えて飛来する渡り鳥を調べることで、国際的な自然環境の在り方を提言するものである。日本海に突き出た能登半島は渡り鳥が数多く飛来するコースに当たり、石川県は「野鳥 の楽園」といわれている。富山県にも同半島などを経由して多くの渡り鳥がやってきている。調査は加賀と能登で渡り鳥を中心に生息数などを調べ、過去のデータと比較しながら自然環境の変化を探る。石川の豊かな自然と、調査によって浮かび上がってくる課題を広くアピールしたい。さらに身近な野鳥を通じて、県民がふるさとの環境についてあらためて考える契機にしてもらいたい。 調査初日は加賀、能登の4カ所でマガンやカモ、ホシハジロ、コハクチョウなどを確認 した。渡り鳥については近年の暖冬傾向で、国内の渡り鳥の越冬地が徐々に北上し、大陸ではロシアの繁殖地での雪解けが早くなり、渡り鳥の生態に影響を与えているという。 石川県がまとめた2009年度のガンカモ科鳥類生息調査によると、ガン、ハクチョウ 、カモ類の確認数は調査日の天候が恵まれて、過去20年でワースト2位だった08年度を約47%上回る4万6千羽余りだった。渡り鳥に関するデータは、国際的な環境変化を考える手がかりの一つとなり、今回の調査結果を注目したい。 調査個所となったラムサール条約登録湿地である片野鴨池(加賀市)や七尾西湾(七尾 市)、河北潟周辺(金沢、かほく市、津幡、内灘町)、邑知潟(羽咋市)をはじめ、富山の氷見市十二町潟周辺など北陸には渡り鳥の飛来地が多い。動植物の宝庫であるとともに、われわれ人間の生活を支えてきた地域の資源であるが、水質悪化や外来種による生態系の影響など、各地が抱える課題も多い。調査を機に、より現状を把握して環境保全の取り組みにも反映していきたい。
◎柳田法相辞任 国会軽視のツケは重い
「補正予算を通すために辞める」という。必ずしも辞める必要はないが、予算成立のた
めに犠牲になる、と言いたげである。反省の思いより、無念さがにじむ会見には、ほとほとあきれるばかりだ。そもそも柳田稔法相の辞任は、あまりにも遅すぎた。問題となった発言からは、閣僚と しての自覚や責任がみじんも感じられない。本来なら発言が批判を浴びた直後に決断すべきだった。 法相の辞任は菅政権にとって少なからぬ打撃だろうが、だれも責任を取らずに、衆参ね じれ国会を乗り切れるわけがない。菅政権の支持率急落は、国会を軽視してきたツケである。国会軽視は国民軽視そのものであることに、なぜ思いが至らないのだろう。 柳田氏の言動は、菅政権の無責任体質を色濃く映し出している。菅首相が当初から一貫 して柳田氏を擁護してきたのは、下手に柳田氏を辞任に追い込むと、今度は仙谷由人官房長官や馬淵澄夫国土交通相らに対する問責決議案提出に発展し、閣僚のドミノ倒しになることを恐れたからだ。 問責決議案の可決が不可避となって、ようやく「10年度補正予算案を何としても速や かに通さねばならない」と暗に辞任を迫り、柳田氏に辞表を書かせた。罷免すれば「任命責任」をより厳しく問われるのを恐れたのだろうが、そんな小細工をしたところで、風当たりが弱まるとは思えない。 判断を誤って、ずるずると問題を長引かせ、大火事になっても誰も責任を取ろうとしな い。この一件で、首相の指導力、菅政権の統治能力のお粗末さが改めて浮き彫りになった。 柳田氏は「なぜ自分だけが」と不満に思っているかもしれない。民主党が政権を取って 以降、「政治とカネ」をめぐる疑惑や不祥事を起こした閣僚や党幹部が何人もいた。前例にならい、逃げの一手で時間を稼げば、そのうちほとぼりも冷めると高をくくっていたのだろう。自民党などが目指す仙谷官房長官らへの問責決議案の可否が菅政権の命運を決定付ける大きな節目になりそうである。
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