2010年9月24日 21時58分 更新:9月24日 22時14分
24日の外国為替市場は政府・日銀が介入に入ったとの観測が強まり、一時的に円が急落したが、関係者は一様に「コメントしない」(野田佳彦財務相)と口をつぐんだ。15日に6年半ぶりの介入に踏み切った際には、野田財務相が緊急会見で「介入実施」を宣言したが、その後は一転して沈黙を貫いている。介入のタイミングや量などの「手の内」を明かさないことで、市場に介入への警戒感を植え付ける狙いがあるとみられ、微妙な神経戦が続いている。
大口の円売り・ドル買い注文が入り、市場に「政府・日銀が介入に入った」との観測が流れたのは24日午後1時過ぎ。1ドル=84円台半ばで取引されていた円相場は、一気に1円近く円安・ドル高に動いた。市場では、「介入以外の大口の注文が入っただけ」(外資系銀行)など、さまざまな観測が飛び交ったが、政府・日銀は介入の事実を明らかにしていない。
政府・日銀が「沈黙」に転じた背景には、市場との駆け引きがある。15日に始まった今回の介入は米欧の協調を得ていない単独介入だけに、介入量で巨大な市場に対抗しても「太刀打ちできない」(財務省幹部)。このため、市場の心理に働きかける効果的なタイミングで介入に入ることで、最大限の効果を引き出す必要に迫られている。
「市場で円の高値警戒感が出たタイミングで介入を打てば、市場参加者が円売りに乗ってくる」というのが政府の作戦。介入の有無について口を閉ざすのも、「市場に手の内を知られると、駆け引きで後手に回る」(財務省幹部)との思惑があるからだ。
15日の介入後、1ドル=85円台で安定していた円相場は、21日米連邦準備制度理事会(FRB)が追加の金融緩和に前向きな姿勢を示したことをきっかけに、再び円買い圧力が強まった。24日には84円台前半と、83円台をうかがう水準まで円高が進み、市場で介入に対する警戒感が高まっていたため、介入観測に市場が一斉に反応する結果になった。
ただし政府・日銀が介入を明言しないことで警戒感が薄れ、24日昼過ぎからは再び円買いの動きが優勢になった。介入観測で85円40銭まで値下がりした円は、再び84円台前半まで値を戻した。
一方で、政府の「沈黙」は欧米への配慮との見方もある。中国の人民元相場の切り上げを要求する米国では、議会を中心に日本の為替介入が「中国の為替政策を容認することになる」との警戒感が広がっている。23日の日米首脳会談では、為替問題は一切触れられず、双方にとって微妙な問題であることをうかがわせた。【坂井隆之、大久保渉、ワシントン斉藤信宏】