「3年以内既卒者」就職を支援 契約社員採用で研修、政府は奨励金
2010/11/11 10:49更新
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就職先が決まらずに大学などを卒業した学生の就職支援が広がりを見せている。政府は卒業後3年以内の学生を採用した企業を支援する内容を盛り込んだ経済政策を実施。企業側も既卒者の採用に乗り出している。(織田淳嗣)
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記事本文の続き ◆社会への助走期間
「起立!」「遅い。どっぷり腰掛けてたらすぐ立てません。音もマナーです」。女性講師らの声が響き、生徒たちは起立と着席を繰り返す。
総合人材サービスのパソナ(東京都千代田区)が今年始めた「フレッシュキャリア社員制度」で、採用前に行う「人材創造大学校」の基礎研修だ。今年卒業した学生らを契約社員として採用し、IT・通信会社やメーカーなどで就業経験を積ませる試みだ。雇用期間は最大2年間。基礎研修は5日間で、あいさつや身だしなみ、声の出し方などが徹底的にレクチャーされる。
初日の研修を受けた須田直樹さん(23)は「大学ではここまで細かく教えてもらえなかった。明日までに髪を切ってきます」と驚きながら話していた。
生徒らは採用後、働きながら人材創造大学校で英会話や経理などスキルを磨くことができる。一部を除き、費用はかからない。
パソナの新卒キャリア支援担当、大友眞理子・執行役員は「日本では既卒でフリーターになってしまうと、途端に就職が難しくなる。キャリアにブランクをなくし、社会への助走期間をつくる仕組みが必要」と話す。就業体験を積むことで、イメージ不足からの早期離職を防ぐ狙いもあるという。
10月末までの時点で約1370人を採用し、全国6都市の約770企業と連携した。来年は採用人数も約6千人に拡大する方針だ。
◆離職者への対応も重要
既卒者を採用する企業を支援しようと、政府は9月、採用した既卒者1人につき3カ月間、月額10万円を支給するなどの「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」と、正規雇用後、6カ月経過後に100万円を支給する「3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金」の2制度の導入を決めた。
トライアル雇用奨励金は何人分でも申請できるが、採用拡大奨励金は1回のみ。9月末時点で約1万8千件の応募があったという。
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の小島貴子准教授(就職指導論)は「企業の既卒者の採用意欲を高める材料にはなる」と、これらの制度を評価。一方で、離職した学生らへの支援の重要性を強調する。
厚生労働省職業安定局集計の「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」によると、平成21年3月卒の学生の1年以内離職率は11・4%。雇用保険の対象とならない学生もおり、就職活動費の支援が必要だという。
一方の学生側の心構えとして、小島准教授は「求人は出していないが、いい人がいれば採るという『潜在求人』はある。仕事を探していることを親戚(しんせき)や知人に知らせ、人のおせっかいに乗っていくことも必要。卒業後に就職が決まっていないことは恥ずかしいことではない」とアドバイスする。
■新制度対象は20年卒以降、40歳未満
「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」の支給条件は、平成20年3月以降の学校卒業者(中学・高校・大学など)で就職先が未決定▽卒業後1年以上同じ事業主に正規雇用されての勤務経験がない▽40歳未満。3カ月の有期雇用期間の月額10万円のほか、正規雇用3カ月経過後には、対象者1人につき50万円が支給される。
「3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金」は大学などの卒業生が対象で、中学、高校、各種学校卒は認められない。いずれもハローワーク、または新卒応援ハローワークに求職登録をしていることが必要。
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