ちょっと困ったことになった、どのくらい困ったことかというとバンジージャンプで飛び降りた直後にヒモが切れてしまうくらい困った。
「銀行は既に包囲されている! 人質を解放するんだ!」
「黙れ! ごちゃごちゃぬかすとこいつをぶち殺すぞ!」
今、銀行強盗が俺を人質にとってやがります。
第一話
犯人は一人だが、俺の首をがっちりと腕でロックして包丁を突きつけている、しかも腹に爆薬をつけているときたもんだ。
銀行には俺と犯人意外の人はいない、みんな俺が捕まったとき逃げました。
どうしてこうなったんだろう、俺はお金をおろして明日の母さんの誕生日のためにケーキを買おうとしただけなのに。
駅前のケーキ屋さんの先着20名様限定発売のケーキは売り切れてるだろうなあ。母さんはあのケーキが大好きなのになあ。
「おらあ! さっさと100億持ってこいやあ! 」
この犯人さんは頭が悪いようだ、100億とか用意できるわけないだろう。きっと家庭の事情であまり勉強ができなかったんだろう。かわいそうに。腹に巻いているのも爆薬ではなく馬鹿薬にちがいない。
「円じゃねえぞ! ペセタだ! ペセタ! 」
シカゴタイプライターでも買う気か? それとも無限ロケットランチャーか?
「後五分で用意しやがらなかったから爆薬を爆発させるぞお! 」
犯人はライターをちらつかせる。
ひいいい! 頭が悪いとか言ってごめんなさい! 馬鹿薬とか言ってごめんなさい! だからやめてくださいお願いします! 殺さないでええぇぇ!
「ごーお、よーん」
「やめろ! 落ち着くんだ!」
ちょっとアナタ! なに嘘ついてるの!? 五分と五秒の違いもわからないの!?
暴れようとするが包丁でちくりと首を刺される、痛い!
「さーん、にーい」
「逃げろー!」
「爆発するぞー!」
「ヤメロー! シニタクナーイ!」
ああ! 周りの野次馬達と警察が逃げてゆく! 俺を助けてー! 見捨てないでえぇー!
「いーち」
「助けてくれぇー! 誰か! 誰かー!」
「ゼーロ」
一瞬の衝撃 悲鳴 痛み
思い出せるのはこれくらいだ。
「翔子ー! おとーさんだぞー! ほら言ってみろ! おとーさんて!」
「もう、まだ無理よあなた。生まれたばかりなんだから」
目の前には満面の笑みの男性と優しく微笑む女性。
さて、どうしてこうなった?