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防衛省通達:行事参加の部外者選別、論議呼ぶ 政治中立か、言論の自由か

 政治的発言をする部外者を防衛省・自衛隊主催行事などに参加させないよう指示した同省の事務次官通達が波紋を広げている。国会では「言論統制」だとの批判が自民党から相次いでいる。思想・信条は極めて重要な個人情報として収集手法が問われる中で、防衛省は問題発言しそうな人物を判断するという難しい課題を抱えることになる。果たして通達まで出して規制すべきことなのか。【臺宏士、内藤陽、樋岡徹也】

 ■経緯

 防衛省によると、発端は今月3日の航空自衛隊入間基地(埼玉県)航空祭の祝賀会。自衛隊協力団体の会長(88)が中国漁船衝突事件などに触れ、「一刻も早く菅政権をぶっつぶして、昔の自民党政権に戻しましょう。民主党政権では国が持たない」などと発言した。

 発言を受け省内で対応を検討し、最終的に10日に政務三役や事務次官らが協議し通達を出すことが決まった。

 次官名の通達は「施設を管理する自衛隊側が自衛隊法などで定めた政治的行為の制限に違反したとの誤解を招くような極めて不適切な発言」とし、部外者の関連施設での行事参加について、政治的行為をしているとの誤解を招くようなことを行わないよう要請▽誤解を招く恐れがあるときは参加を控えてもらう--などとしている。

 さらに、関連行事での部外者の発言録を作成し防衛省への提出を求める「事務連絡」を各部隊などに出した。

 会長は通達について「祝賀会場で、思ったことを話しただけ。自民党政権の時にも批判したが通達を出されるようなことはなかった。完全な言論統制だ」と話した。

 ■国会

 自民党は通達に反発。参院予算委員会では、政府側と論戦が展開された。

 「官から民間人への言論統制。民間人の思想を事前にチェックしなさいということを通達した。憲法に保障された言論の自由に反するゆゆしい事態だ」。自民党の衛藤晟一氏は17日の参院予算委員会で批判した。これに対し、北沢俊美防衛相は「政治的中立をどう担保するかが極めて重要」と反論。

 18日の予算委でも、仙谷由人官房長官は「言論の自由、表現の自由はある一定の場所、時間帯、対象人員を相手にした時にある種の制約がありえても甘受しなければならない」と答弁した。

 ■個人情報

 「隊員が政治的行為をしているとの誤解を招く恐れがあるときは、参加を控えてもらう」と明記した今回の通達。しかし、「誤解を招く恐れ」の有無を判断するための思想や信条は、個人情報の中でもより保護の必要性が高い。防衛省や自衛隊による個人情報の収集を巡っては何度も社会問題化してきた。

 02年には旧防衛庁が情報公開請求者のリストを作成し身元調査をしたことが発覚。翌03年にも住民基本台帳を基に満18歳を迎える自衛官適齢者の名前の提供を自治体から受けていたことが判明。さらに、07年には、共産党が発表した陸上自衛隊情報保全隊作成とされる内部文書で、イラク派遣に反対する市民団体や野党議員の動向、デモ参加者の写真、記者の取材内容などを組織的に収集していたことが分かった。

 防衛省はどのような根拠で判断するのかは不明だが、収集方法によっては新たな問題を引き起こしかねない。

毎日新聞 2010年11月20日 東京朝刊

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