2010年11月22日11時12分
発行中の歴史雑誌で古いのが月刊「歴史読本」(新人物往来社)だ。1956年創刊と、半世紀を超える歴史を誇る。大学や研究機関の専門家らの重厚な論考をそろえ、75年に設けた「歴史文学賞」からは宮部みゆきさんら著名作家が輩出している。
88年創刊の月刊「歴史街道」(PHP研究所)は、148ページのうち70ページ近くを特集に割く。写真やイラストを多用したビジュアルが持ち味だ。黒鉄ヒロシさんが描く表紙絵も魅力を支えている。
隔月刊「歴史群像」(学研パブリッシング)は戦史に特化している。92年に諸葛孔明などの特集を組んで創刊。特集の内容による売れ行きの違いを分析し、97年から戦史に絞った。
「パイ広がる」と古参誌歓迎
古参、新参ともに編集方針に特色を出そうと工夫している様子がうかがえる。とはいえ、時代ものの映画やドラマをグラビアで取り上げたり、人気のある戦国武将や幕末の志士らをしばしば特集にしたりと、どこか似た面もある。
NHKの大河ドラマにも頼りがちだ。「歴史街道」は「龍馬伝」にちなんで今年は4回も龍馬がらみのメーン特集を組んだ。「同じ人物を扱っても視点を変えれば違った魅力が見える」(編集部)と、岩崎弥太郎や高杉晋作らを組みあわせて一ひねりはしているが、マンネリ感は否めない。
歴史ブームを追い風に、09年は前年比で1割近く部数を増やした歴史雑誌もある。だが、雑誌業界は全体的に見れば厳しい。今年1月に創刊した隔月刊「歴史スペシャル」(世界文化社)は、思うように部数が伸ばせず、11月発売号で休刊した。
2誌の参入に戦いは激しさを増すが、古参誌側にはむしろ、歓迎の空気が漂う。「購入者が増えることは大きい。パイは広げないといけない」と歴史読本の本多秀臣編集長。歴史街道編集部の水島隆介さんも「業界がにぎわってくれればいい」と話す。ともに、新参誌の視点が歴史好きを書店に引き寄せることを期待している。(大室一也)