2010年10月20日10時55分
今月2日のさいたまダービー(浦和戦)に端を発したJ1大宮の入場者数水増し問題は、3年前までさかのぼるものだった。クラブ幹部2人による数字の操作で増えた「観客」は、4季で計11万人余り。1993年の発足からJリーグの売り物だった実数発表の大原則を根幹から揺るがしかねない。
19日の記者会見で大宮の渡辺誠吾社長は「サッカーを愛する皆さんにおわびします」と涙ぐんだ。リーグの入場者算出基準を職員の誰も知らなかったという。実態を把握していたのは問題の幹部2人のみだった。水増しは2千人前後で常態化し、最多は4609人。1試合平均約18%。ずさんさを組織として問われても仕方ない。
Jリーグは近く裁定委員会を開くが、諮問に基づき制裁を決める大東チェアマンは「怒り心頭だ」と語気を強めた。これまでJクラブに科された最も重い制裁は2千万円の制裁金だが、勝ち点減まで踏み込むか注目される。
渡辺社長は問題の背景について「年間動員30万人」の目標がプレッシャーになったことを挙げた。観客が多ければ、スポンサーを獲得しやすくなるという経営上のメリットも生まれる。
同地域には年間80万人を集める人気クラブ、浦和がある。「人気がないと思われると客足が遠のく」。そんな焦りもあったという。
Jリーグ自体が年間1100万人を動員する「イレブンミリオン・プロジェクト」を掲げている。他のクラブは大丈夫なのか。そんな疑問を抱かれかねない。Jリーグ理事でもあるJ1川崎の武田信平社長は「イメージが悪くなる」と表情を曇らせた。
「ほかはないと信じている」とJリーグの大東チェアマン。大宮以外のJ1、J2各クラブに実態の精査を求め、疑義が生じれば対応するという。ただ当面はクラブ内部の調査に任せる方針だ。
実数発表はスポーツ興行の透明度を高めた実績がある。Jリーグの姿勢が問われる。(渡辺芳枝、村上研志)