2010年9月23日 21時41分 更新:9月24日 0時3分
【井出晋平、北京・浦松丈二】ハイブリッド車の製造などに不可欠なレアアース(希土類)について、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は23日、中国当局が日本向け輸出を禁止したと報じた。また、中国でのレアアースの通関手続きが21日、ストップしたことがわかった。日本の大手商社が明らかにした。通関が突然、認められなくなるのは極めて珍しい。
禁輸が事実なら、尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近での衝突事故で中国が新たな対抗措置に出たことになる。温家宝首相は21日、事故で「新たな行動を取る」と警告していた。
中国は22~24日、中秋節の連休で、税関も一部を除いて休んでいる。差し止められたのは実質的には21日だけだが、日本の大手商社幹部は「たまたま税関の事務作業が滞っただけなのか、禁輸措置なのかは、連休が明けてみるまで分からない」と話した。
日本政府は25日にも中国側に通関停止について照会する方針。
ニューヨーク・タイムズ紙は、匿名の業界関係者の話として禁輸措置を報じた。禁輸措置は今月末までで、その後は日本側の対応次第で継続されるかどうかが決まる。29日には衝突事件で逮捕された中国人船長の拘置期限を迎えるため、日本側に圧力をかけた形だ。
一方、ロイター通信などによると、中国商務省報道官は「レアアースの対日輸出は禁止していない」と同紙報道を否定した。
しかし、AP通信によると、中国当局は日本向けにレアアースを輸出している主要企業に対して輸出しないよう圧力をかけている。日本に輸出した場合、当局が割り当てる輸出許可枠を削減すると示唆しているという。
中国政府は21日には、旅行各社に訪日ツアーの販売自粛を要請し、各社は事実上、ツアーを販売できなくなっている。レアアースでも、日本側に圧力を加えるため、中国側が事実上の禁輸措置に踏み切った可能性は否定できない。
業界関係者は毎日新聞の取材に「輸出規制で品薄になった時期に情報が流れ、価格上昇などの影響が出そうだ」と話した。
中国は今年7月、今年のレアアース輸出許可枠を前年比4割減の約3万トンに削減すると決定。今年8月に開催された日中ハイレベル経済対話でも削減見直しが協議された。
生産・流通量の少ないレアメタル(希少金属)のうち、性質が似た17元素の総称。他金属と混ぜると磁力が強まったり、耐熱性が高まる特性があり、ハイブリッド車やパソコン、デジタルカメラなどハイテク製品の部品に不可欠な金属だ。産地が偏在しており、中国が世界生産量の9割超を占めている。