今、イタリアで起こっていること。ルーマニア人移民排斥運動。 [イタリア]
イタリアに限らず、現在、EU諸国は、移民問題に揺れています。
ブログ《「国際派時事コラム・商社マンに技あり!」 ライブ版》の
11月9日のエントリーは、《イタリア炎上 ルーマニア流入民問題》。
2007年11月6日、ウォールストリートジャーナル
《Rome and the Romanians》(一部。全文は購読者のみ)
http://online.wsj.com/public/article/SB119430059109983064.html
の社説をあげ、イタリアのルーマニア移民問題について書いておられます。
イタリアに、職を求めてやってきたルーマニア移民50万人。
犯罪を犯すものが多数出ていて、
《今年、ローマ市の犯罪逮捕者の4人に3人がルーマニア人だった。
そして10月に海軍幹部の妻のレイプ殺人事件が起き、
その容疑者にルーマニア人が浮上して、イタリアは炎上した。》
ルーマニア移民排斥の動きがイタリアで出ていると。
この事件に関しては、日本の新聞でも報じられています。
毎日新聞、11月4日、
《イタリア:「危険移民」を追放 EU加盟国市民にも適用》
http://mainichi.jp/select/world/news/20071104k0000m030097000c.html
移民を国外退去できる緊急法令をイタリア政府は出しています。
発端となったのは、《ローマで10月30日、イタリア人女性がルーマニア人移民の
男に強盗目的で惨殺 された事件》。
ローマ市長は、今年7月までの重大な犯罪の75%がルーマニア人によるものだ
と公式に発言しています。
記事にもあるように、ルーマニアは、今年1月にEUに加盟し、
国外への移動が自由になっています。
そのおかげもあって、イタリアを中心に移民が増加しているようです。
毎日新聞の記事では、ルーマニア政府の緊急法令に対する不満の声を
紹介していますが、11月頭に、ルーマニア政府は、事態の鎮静化を狙い、
カリン・ポペスク=タリチャーヌ首相が、イタリアを訪問しています。
カリン首相は、イタリアのプロディ首相らに会い、
このルーマニア移民問題について、発言しています。
ルーマニア政府のサイト内、2007年11月3日、(訪問前)
《Headline: PM statements on the situation of Romanians living in Italy》
http://www.guv.ro/engleza/presa/afis-doc.php?idpresa=8018&idrubricapresa=2&idrubricaprimm=&idtema=&tip=&pag=&dr=
ヘラルド・トリュビューン。11月7日。
《Romanian leader seeks to calm Italian anger over immigrant crime》
http://www.iht.com/articles/2007/11/07/europe/italy.php?WT.mc_id=rsseurope
なお海軍幹部の妻のレイプ殺人事件の容疑者は、
ルーマニアからの移民とされていますが、さらに言えばロマ、
これまでの言い方だとジプシーと呼ばれていた集団の一員です。
ロマは歴史的にも差別の対象になってきたグループで、
それはルーマニア国内でも同じ。
それまで、このロマの取り扱いについてどうするのか、
ヨーロッパ諸国は頭を悩ませてきました。
しかし、現在は、このロマ以外のルーマニア移民(入国者)が
圧倒的に増え、問題を引き起こしているのです。
さて、緊急法令ですが、11月15日から施行された模様。
対象は約5000人に上るそう。
共同通信。11月15日。
http://www.47news.jp/CN/200711/CN2007111501000600.html
こうした中、ヨーロッパ各国、また欧州議会で政治的に勢力をのばしているのが、
いわゆる極右勢力と呼ばれる政党です。
イタリアの場合、あのムッソリーニの孫娘であるアレッサンドラ・ムソリーニがその一人。
そうした極右勢力が、ヨーロッパ内で連携を強めています。
北海道新聞、11月8日。
《EU極右、連携強める 09年欧州議会選へ 勢力拡大目指す》
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/59299.html
その中で、《当面の目標は、今月中旬にルーマニアで行われる、
同国に割り当てられた欧州議会議員選挙 (定数35)。》
これがどうなるのか? またなったのかが気になります。
ところが、アレッサンドラが、今回の事件に関して、差別発言を行ったということで、
欧州議会の極右勢力が壊滅状態に陥ってしまいました。
彼女の発言で、《同氏と同じ欧州議会の政党グループ
「アイデンティティー・伝統・主権(ITS)」に属していたルーマニア出身の
5議員》が離脱していまったのですね。
時事通信、
《2007/11/13-14:16 欧州議会の極右会派、消滅へ=ムソリーニ孫娘の差別発言で》
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007111300529
BBC、2007年11月9日。
《EU far-right bloc faces collapse》
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7086986.stm
《habitual law-breakers》か。
ムッソリーニについては、オールアバウトの《世界のタレント政治家》に紹介されています。
http://allabout.co.jp/contents/secondlife_tag_c/worldnews/CU20070715A/index3/
ところで、ブログ《「国際派時事コラム・商社マンに技あり!」 ライブ版》の
筆者である泉氏は、ルーマニア人の心情として、
《本人らは
「俺たちの祖先はここから東欧の地へ殖民したのだ。戻ってきただけだ。
いまこの半島に居座っている てめぇらこそ、俺たちの祖先がつくったローマ文明を
破壊しつくしたゲルマン人の末裔だろうが」くらいの意識なのではないか。》と
書かれています。
蛇足ながら補足すると、
現在のルーマニアにあたる地域は、
ローマ帝国に106年に制服され、属州ダギアとなりました。
当時の住民は、ダキア人。
属州となったことで、ローマから、植民者が送り込まれ、
道路、橋などのインフラが整備されます。
その後、《3世紀のゴート族をはじめ、フン族、スラブ人、トルコ系のブルガール人などの
侵入を次々にうけたが、住民はローマ時代にとりいれたラテン文化をたもちつづけ、
スラブ人との混血によってしだいに独自の民族集団を形成する。
彼らはブラフ人(ワラキア人)とよばれ、隣接するビザンティン帝国にたえず脅威をあたえた。》
さらに現代にいたるまで、様々な歴史の曲折がありますが、
基本的には、ルーマニア人は、ダキア人を基本にしながら、
様々な集団が入り交じった人々であるという認識でいいと思われます。
マイクロソフト、エンカルタのルーマニアの記述。
http://jp.encarta.msn.com/text_761559516___36/content.html
一方、イタリア半島の方はどうかというと、
いわゆる「ゲルマン民族大移動」で、様々な動きが出てきます。
(この事情は、ルーマニアも基本的に変わらないのだが…)
つまり、上の引用にある通り、西ゴート族、フン族、ヴァンダル族、
東ゴート族そしてランゴバルト王国とめまぐるしく半島の主役が入れ変わります。
その意味で、泉氏の記述中の《ローマ文明を破壊しつくしたゲルマン人》は、
ある意味、その通りです。
しかし、《移動後のゲルマン人の人口比率は5%をこえることはなく、
西ローマ帝国滅亡後も、軍隊をのぞけば社会におけるローマ人の
指導的地位に大きな変化はなかった》(下記のエンカルタ内の記述)と、
言われていることから、現在イタリア半島に住む人々が《ゲルマン人の末裔》
とまでは言い切れないと思います。
(そもそも、「ルーマニア人がローマ人の末裔」と言えるのかも疑わしい。
しかし歴史的事実はどうであれ、ルーマニア人の多くは、
上のように信じているという趣旨で書かれている)
マイクロソフト、エンカルタの民族大移動の記述。
http://jp.encarta.msn.com/encyclopedia_1161536380/content.html
日本もイタリア、フランス、ドイツなどの移民問題を、
対岸の火事として見てはいられない状況が来ています。
歴史、地理的状況は大きく違うとはいえ、
最低限、世界の実情をしっかり把握しておくことは必要だと思います。
個人的なメモ
女性のレイプ殺人事件。
http://www.repubblica.it/2007/11/sezioni/cronaca/tor-di-quinto-uno/villaggio-mailat/villaggio-mailat.html
被害者が死亡。
2007年11月1日、Corriere della sera
《Giovanna Reggiani è morta》
http://www.corriere.it/cronache/07_novembre_01/rom_accusato_omicidio.shtml
2007年11月13日、フィオレンティーナのルーマニア出身のアドリアン・ムトゥ。
(試合中に差別的なブーイングなど差別的な扱いを受けていると言われる)
故障で戦線離脱です。
《フィオレンティーナのムトゥに災難、3週間の離脱》
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/headlines/20071113-00000005-spnavi-socc.html
入管で、指紋採取、顔写真。改正入管法。11月20日から施行。
《入国外国人の指紋採取義務化 改正入管難民法》
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/88254/
〇指紋採取→外国人犯罪減少となるのか?
〇外国人犯罪の増加、外国人の旅行者、居住者の増加、割合。
全体に締める割合と犯罪率。
〇Adrian Mihai CIOROIANU外相の、差別発言。(要確認)
〇ルーマニア
紀元前1000年頃 ダキア地方には、トラキア系ダキア人が居住。
紀元前4世紀頃 ケルト人が進出。
紀元前70年 古代ダキア人が国を統一。
西暦106年 ローマ皇帝トラヤヌスが、ダキア征服。
ローマ帝国市民がダキアに移住植民。「ダキアのローマ化」
西暦271年
東ゲルマン民族の東ゴート族とサルマティア族のダキアへの侵攻。
古代ローマ帝国の軍団がダキアから撤退。
東ゲルマン民族の西ゴート族、フン族(モンゴル系)、
ブルガル族、マジャール人など様々な民族が侵入。
〇ルーマニア人の意識としては、「自分たちは古代ローマ人の末裔である」。
(そもそも国名Romaniaの由来は、「ローマ人の国・土地」なのだから)
ルーマニアの基礎情報(国際金融情報センターのサイト内、2007年9月10日)
http://www.jcif.or.jp/report/world/147.pdf
ロマは、人口全体の2.5%。(最大のロマ人口を持つ国とされる)
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狙っているのか?》
〇ルーマニアの天才少女クレオパトラ
日本の場合、外国人犯罪の割合は? 国籍では?
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kokusaisousa/kokusai1/16b/contents.htm
《来日外国人犯罪の検挙状況(平成16年)》
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