【ブカレストIPS=クラウディア・シオバヌ、11月15日】 10月30日に起きたルーマニアからの移民でロマ民族のNicolae Mailatによるイタリア人女性強盗レイプ殺人事件を受けて、イタリア政府は市民の安全を脅かすと思われる欧州連合(EU)市民の追放を認める法令を11月1日定めた。法令制定後3日間でイタリアの7都市から39人のルーマニア人が追放処分となった。 イタリアにおけるルーマニア人の犯罪率は移民グループのなかで最も高い。ローマ市長によれば、今年1月から9月中にローマで逮捕された外国人およそ8000人中4700人がルーマニア人である。 言語および文化的類似性から、イタリアはルーマニア人の出稼ぎ先として最も好まれる国のひとつとなっている。公式の資料では、イタリアで働くルーマニア人は50万人とされているが、独立団体Open Society Foundation Romaniaは100万人と推定している。 11月7日にローマでルーマニアのタリチャーヌ首相と会談したイタリアのプローディ首相は「ルーマニア人とイタリア人双方の安全を保証し、EUの基盤である基本的自由のひとつ、人々の移動の自由を確保するためのもの」と語ったが、法令の趣旨は異なる。 ハンガリー・ブタペストにある「EU拡大研究センター」所長のペテル・バラズ氏はIPSの取材に応えて「イタリア政府の法令は、移民と犯罪というまったく異なる2つのカテゴリーが混同されたもの」と述べ、「こうした重要な問題に対し、このイタリアの法令のような間に合わせの措置がとられることを回避するため、欧州の人々はあらゆる手を尽くすべきである」と警告している。 ルーマニア当局側も、移民と犯罪の区別を強調している。だが、彼らの意図は、犯罪をロマ民族(かつてジプシーと呼ばれた民族)と関連づけて、「誠実」で「勤勉な」他のルーマニア人と区別しようというものである。 ルーマニアのチョロイアーヌ外相が「エジプトの砂漠に土地を買い、彼らを送り込むことはできないかと思う」と発言。外相はロマ民族に言及したものではないと否定したものの、ルーマニアのロマ人やユダヤ人団体から差別発言として公式な非難を呼んでいる。 「犯罪防止策は特定のグループを標的とすべきではない」との警告の声も上がっているイタリアの法令について報告する。(原文へ) 翻訳/サマリー=坪沼悦子(Diplomatt)/IPS Japan浅霧勝浩 IPS関連ヘッドラインサマリー: イタリア:車の窓拭きが一掃される 移民にきびしいギリシャ チェコ:ロマ差別の大臣、汚職で辞任 |