PJ: 田中 大也
東京都「非実在青少年」条例再提出=都の「拙速姿勢」と「秘匿的姿勢」は問題だ
2010年11月18日 07:57 JST
【PJニュース 2010年11月18日】「非実在青少年条例」として、恐らく、条例の中では、ほとんど例を見ないほどに議論と批判の的となった、東京都青少年健全育成条例改正案が、東京都によって、今月末から開かれる都議会に再提出される方向で固まった模様だ。単に十八歳未満の閲覧を制限するだけではなく、作品の「性質」によっては、成人向けの漫画やアニメなども規制されるなど、極めて先鋭的な規制案が、再提出を機に、再び激しい論争の対象となるのは間違いなさそうだ。
肝心の、修正、再提出されるという条例の内容だが、筆者がこの原稿を書いている(十一月十七日)段階では、未発表の状況にある。以前出された条例案よりも良くなっているのか、ほとんど変わっていないのか、はたまた悪くなっているのか、今のところは分からない。故に、まだ条例案の是非について分析したり、論じたりすることはできないが、現時点でも言えることがある。条例を提出する東京都の姿勢が、あまりにも拙速で、「秘匿的」だということだ。
この条例案は、例え成人向けの図書類であっても販売規制が盛り込まれていたり、過去の図書を廃棄、「焚書」することに繋がる「児童ポルノ不所持責務」規定が盛り込まれていたりと、他の自治体における青少年条例と比べても、規制の範囲は広い。
また、出版業が東京に一極集中している関係で、影響が全国に波及するという特性があったりと、全国的にも極めて強い影響力を持つもので、だからこそ猛烈な批判の対象ともなった。
規制の枠組み自体も独自的で先鋭的なものが多く、流れ作業的に条例化しても問題ないというものでもない。こうした前提がある上、論争の末に継続審議、そして否決された経歴を持つ条例なのだから、再提出する際には、早くから変更部分を明示化し、「どこを変え、どこを変えないのか。何故変更し、何故変更しないのか」の意思を明らかにして、じっくりと都民や国民の意見を聞いた上で、上程するか否かを決めるのが筋というものだろう。
しかし、現実には、九月の議会で提出を見送るというタイムラグがあったにも関わらず、未だに条例の中身は外部には全く分からず、当然、パブリックコメントなどで、修正案の是非を問うという手続きを踏んでいるわけでもない。
しかも、今月末に開会し、来月の十五日頃には閉会するとしている都議会に提出、可決しようとしている。内々にはもっと早く結論が出るだろうことを考えると、是非を巡って議論する時間もほとんどないということになる。
軍略的な速攻や電撃戦の見地から言えば、ギリギリまで提出を遅らせて、採決のタイミングを限界まで早めれば、確かに「条例案に対して送られた批判」は見た目的には最小限に抑える事もできるだろう。しかし、時間が短くなればなるほど、議論を尽くして中身を精査していくという、条例を制定する際に求められる本来あるべき姿勢が放棄されていくことになる。
二兆円規模と言われる出版業界に深刻な影響が予想され、成人、未成年者問わず、規制強化ということで制限を受ける条例を通す上で、正しい姿勢とはとても思えない。条例への賛否以前に、提出までのプロセス自体に問題があるのではというのが正直なところだ。
また、今回の条例再提出を巡っては、改正案を提示された各政党の対応も広く問われるものになるだろう。
条文や、条文をもたらす影響を分析、精査する時間があるとは思えず、手続きも議論も十分とは言えないような条例にどう向き合うのか、さらに言えば、拙速かつ秘密主義的な東京都側の動きを食い止めることができるのか。各党の法律と行政への姿勢が、注目されるところだ。【了】
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