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PJ: 田中 大也

「児童の人権擁護」や「児童ポルノ根絶」に所持・取得罪は効果はあるのか?(上)
2010年11月16日 06:17 JST

【PJニュース 2010年11月16日】これまで、何回にもわたって、「児童ポルノ」規制推進のデメリットや、所持、取得罪の問題点等々を解説してきたが、今回は、規制推進によって、実際にメリットがあるのかどうかを分析していく。具体的には、所持・取得罪の設置と運用によって、「児童ポルノの根絶」と、「児童の人権保護」という目的が達成され得るのかどうかという点を見ていきたいと思う。

「児童ポルノ」の単純所持や取得罪の成立を支える理由としては、「情報を得る、持っている時点で、児童の人権を侵害している。故に犯罪である」というものであり、「児童ポルノが存在し続ける限り、児童の人権侵害は継続されるのだから、全て抹消する」という理論である。この考えは、取り締まり側が問題とする画像や映像を持っている人間が一万人いれば一万人、十万人いれば十万人、あるいは百万人以上であっても、全員を逮捕することを前提にしなければならない。また、実際に全員を対象にし画像の抹消を確認しないことには、「情報の抹消による人権保護」論は成立し得ない。

だが、かつて販売された映像作品を購入した十万人が、あるいは、一日二万アクセスの画像が一月放置されただけでのべ約六十万人という膨大な数の「人権侵害者」を作り出すという前提があるのだから、完璧に遂行しようとした瞬間、膨大な労力によって、全ての法執行機関はパンクを余儀なくされるだろう。

留置場も拘置所も刑務所も、「児童ポルノ犯」だけで溢れかえり、取り調べや捜査にあたる現場の警察官には、他の任務を遂行する余力など無くなってしまうだろう。

こうした事態を避けるためには、人員への過度の負担を避けるために、多くの案件をスル―していく必要が生まれるが、そうなると、情報抹消による人権保護という理念は達成できなくなる。そもそも、完全に法を適用しようとして頑張ったとしても、本当に該当する被写体が写った児童ポルノが抹消できたかという証明は困難だ。

これらの事から、所持・取得罪が成立したとしても、ごく少数の児童の人権の保護すら完全に行うのは難しいと結論付けることができる。少なくとも、一旦ネット上に情報が流れてしまった場合、人権保護の証明は不可能だろう。

さらに、情報の拡散から摘発までにはタイムラグがあるが、新たな拡散は極めて短時間に行えてしまえる。のべ五十万人が見ているネット上の画像が存在し、それが実は児童ポルノだったとする。だが、見ている側は、情報を知り得る材料もないので気付かない。たとえ誰かが気付いたとしての、その認識が都合良く共有されるわけではないし、認識が正しいという証明もできない。

そして、摘発されるまでに、画像を見ているのべ五十万人のうちたった一人が、別のネット掲示板にその画像を貼りつけるというようなことがあったとしたら、新たに数十万人の「犯罪者」が生まれてしまうかも知れないという状況があるのだ。

これでは、労力やコスト的な観点から、根絶どころか、法の執行による抑制すらも望めない。つまり、所持罪や取得罪では、児童の人権擁護も、児童ポルノ自体の拡散を防ぐのもほぼ不可能ということになる。【つづく】

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