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PJ: 田中 大也

年齢下限無しと「3号ポルノ規定」で 新生児の写真でも「児童ポルノ」に!?
2010年11月15日 12:43 JST

【PJニュース 2010年11月15日】「児童ポルノ」とは、18歳未満、つまり、17歳までの男女(あるいは17歳以下だと主張できる)が被写体となった画像や映像に適用できうるものだが、年齢の下限が設定されているわけではない。法律上は17歳であろうと、1歳児であろうと、同じ枠組みの中として解釈される。

この点だけならば、特に問題はないように思える。しかし、日本における児童ポルノの定義に存在する、実際に児童が性行為をしているようなもの以外でも、「衣服の全部または一部を脱いでおり、性欲を喚起させる」と、取り締まり側が判断すればアウトになる「3号ポルノ」規定が事態を複雑かつ危険なものにしている。

赤ちゃんや乳幼児が、家では裸だったり、おむつ一枚だったりすることは、ごくありふれたことで、親や家族がそうした写真を撮影することも当たり前にある話だ。しかし、「衣服の全部または一部を脱いでいる」状態の幼児を撮影した時点で「児童ポルノ製造」、ネットなどに写真をアップした時点で「児童ポルノ公然陳列」の要件を満たしてしまうと解釈されてしまいかねないのだ。

言うまでもなく、一般常識のレベルからは逸脱している話なのだが、基準が大雑把かつ曖昧であることもあって、あらゆる無理がまかり通るのが、児童ポルノ禁止法の特徴でもある。

第一に、児童ポルノ禁止法は、強姦罪や強制わいせつ罪とは違って親告罪規定がないため、被写体当事者の告訴を待たず、「製造した」、「公然陳列した」という事実が判明した時点で、警察が介入することができる。また、前回でも取り上げたが、「性欲を喚起させ」の部分は、乳幼児の裸でも適用できる法律が前提になっている以上、一般的常識ではあり得ないということで、免責が保証されることはない。撮影された際の、児童の同意能力に関しても、それは無いと言わざるを得ないわけで、十八歳未満であれば、同意が一律無効になってしまう児童ポルノ禁止法の前提上でも、同意があったから大丈夫ともならないだろう。

実際に、一歳児の児童ポルノを撮影するなどした罪で保護者が検挙されるという事態も起こっている。たとえ対象がどんなに幼くても、適用されうるという現実はあるのだ。

これはもはや、子供を育てている全ての親や家族、あるいは、保育園等の関係者にとっての深刻な懸案事項と言える。自分の赤ちゃんを撮影する程度のありふれたことが「児童への人権侵害」とは考えられないが、もし仮に逮捕されてしまったとしたら、上記のように要件が揃い過ぎているので、無罪を勝ち取るのは簡単なことではないだろうし、「幼児である自分の娘の児童ポルノを製造」などと報じられれば、社会的に極めて苦しい立場に追いやられることになるだろう。また、製造だけではなく、画像の提供や公然陳列もアウトなわけで、ネット上で赤ちゃんの画像を拾って貼りつけたというだけでも、犯罪者扱いされかねない。

「サンタフェ論争」、「ジャニーズJr違法化」、「スポーツ、水着写真児童ポルノ化」、そして「赤ちゃんの画像児童ポルノ扱い」と、何回にもわたって、児童ポルノ禁止法に関する様々な問題を取り上げてきた。そこには共通して、いつ撮影されたのかという点や、芸術的価値を考慮せず、肌の露出の許容度という点で、大きく差があるはずの男女を同一の基準で判定したり、一歳と十七歳の人の画像を同様の枠組みで扱うなどの、法律の乱雑さ、杜撰さがある。規制を推進せよとの声も多く聞かれるが、法的処罰の範囲を云々する前に、過去に評価された作品や、穏当なグラビア、スポーツの写真や映像から赤ちゃんの写真まで、全てを違法化し、日本の文化や芸術、日常的な風景に至るまでを壊滅させかねない、現行法への基準から考えなおしていく必要があるだろう。【了】

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PJ 記者