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PJ: 田中 大也

「いつ」と「評価」を問わない児童ポルノ基準が生んだサンタフェ論争
2010年11月10日 06:35 JST

【PJニュース 2010年11月10日】2009年6月、単純所持処罰規定を含んだ規制推進案が、国会で審議された。その際、かつて社会現象まで巻き起こしたベストセラーである宮沢りえ氏の写真集「サンタフェ(Santa Fe)」が議論の的となり、そのやり取りは「サンタフェ論争」として話題を呼ぶことになった。

問題提起の概要は、もし、このまま単純所持規制が成立してしまったら、かつて「サンタフェ」を購入し所持しているような無数の人々が犯罪者として扱われるのではないか、というものだった(発売された時点では宮沢氏は十八歳だったが、撮影自体は十七歳の際になされたとする説が存在している)。

結局、議会が解散され、改正法の成立はなされなかったのだが、そもそもなぜ、「サンタフェ」のような、誰もが知っている大ベストセラーが危険視される事態になったのだろうか。撮影された日時の件は置いても、なぜ、作品の文化性、芸術性に関しては、広く認められており、しかも、刊行から長い年月がたっている作品が、「児童の人権」を問うはずの法律に抵触する危険を問われる事態となったのだろうか。

この点については、児童ポルノ禁止法の性質が関係している。

日本においては、いかなる作品であっても、定義に抵触すれば「児童ポルノ」扱いされることになっており、過去に芸術作品としてどれほど評価されたとしても、この点は覆らない。つまり、芸術的な写真集や映画であっても、十八歳未満のモデルが「衣服の全部または一部を脱いでいる状態で、性欲を喚起させる」と主張されうる状態であれば、過去の評価など一切関係なく「児童ポルノ」として、違法品扱いを受けてしまうのだ。実際、数十年前に製作され、合法な形で公開された作品を提供したとして「児童ポルノ犯」として検挙されるケースがいくつも発生している。

また、児童ポルノかどうかの判別の際には、「どんな」画像かを見るだけで、元になった画像が「いつ」撮影されたものかは問われない。

数十年前の写真だとはっきりしており、被写体が既に児童ではないとはっきりしている場合すら、画像の提供は「児童ポルノ禁止法違反」、となる。

既に児童ではないと分かっている画像にすら、提供などの行為に対して「児童に対する人権侵害」のレッテルを貼るのは、完全に客観的事実に反する話だが、当たり前のようにまかり通っているのが現状だ。のみならず、そうしたケースでも「児童ポルノ案件」として計上されているので、統計上の「児童ポルノ案件数」は「児童の被害件数」として機能し難くなってしまっている。こうした前提がある以上、昔の作品だからと言って、免責がされる保証は全くないということが分かる。

つまり、過去にどれだけ評価された写真・映像作品であっても、数十年、あるいは半世紀以上が経過しているようなものであっても、いつ「児童ポルノ」扱いされるか分からないし、法規制の展開次第では、ネットで閲覧したり所持したりしているだけでも犯罪者扱いされるかも知れないということだ。しかも、現行法の定義では、ヌードの存在する作品にとどまらず、半裸、下着、あるいは水着といったものまで、被写体が十八歳未満であれば児童ポルノとされかねない現実がある。

「サンタフェ論争」で示された危険性は、限られた写真集にとどまらず、過去に登場した無数の作品が「焚書」を受ける危機だと言えるのだ。【了】

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