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PJ: 田中 大也

保護対象の「児童」がもっとも危険になる児童ポルノ禁止法の性質
2010年11月07日 08:25 JST

【PJニュース 2010年11月7日】児童ポルノ禁止法は、あくまで児童に対する人権侵害に対応するために作られた法律とされている。前回までに「鑑定」の脅威などのさまざまな問題点を書いてきたが、それでも、児童保護という目的で動いている、とされてはいる。だが、実際に「児童ポルノ禁止法」において、もっとも潜在的な危険に晒されているのは、保護対象に指定されているはずの「児童」なのだ。

「児童買春」案件や「淫行」案件の場合、たとえ「児童」の側が自発的に誘った結果行為がなされたとしても、法的には「被害児童」ということになる。また、合意の上で「児童ポルノ」撮影がなされたとしても、児童は「被害者」として扱われることになる。

しかし、「撮影される」以外の児童ポルノに関する事案の場合、保護対象の「児童」であっても、被害者扱いはされず、成人と同じように法的処罰の対象となるのだ。原則として「被害児童化」による免責はなされない。

例えば、ネット上で拾ってきた画像や映像を、別のネット掲示板に貼りつけたり、送信した場合、加害者が「児童」であっても、「児童ポルノ事件の加害者」となる。画像や映像が合法かどうか、明確な認識などできないことは、成人と変わらないが、年齢特定すら必要なく立件できる前提が成り立っている以上、不問ということにはならない。

この問題は、提供のみならず製造、「撮影した」場合にも適用されているわけだが、このことが、未成年者への脅威となっている。

「製造」の立件に必要なのは、「誰がどんな」画像や映像を撮影したのかという点のみで、「児童に対する人権侵害」と定義しながらも、被写体との関係性は立件にあたってのハードルにならない。そのため、本来なら合法、あるいは犯罪性を問われないような行為を撮影しただけで、人権侵害のレッテルを貼られることにもなるのだ。既に、自分自身を撮影し公開したというだけで、「児童ポルノ罪」、つまり、児童への人権侵害を行ったとして、「児童」が逮捕されるケースが発生していることは以前にも述べたが、未成年同士であるため、本来なら淫行条例が適用されることはないだろうカップルが、撮影したというだけで、「児童ポルノ加害者」、「被害者」に強引に振り分けられ、検挙されるというケースも起こっている。

本来、犯罪とされない、され得ない行為を撮影したというだけで逮捕され得るという点で、法律での保護対象である「児童」は、むしろ成人よりも危険な状況にある。学校の仲間や地元の知り合いなど、性的な関係になり得る相手の多くが、自分と同じ「児童」であり、何より、「児童」である時点で確実に、「児童ポルノ」になり得る自分自身という要因と付き合っていかねばならないのだから、危険度は深刻と言えるだろう。

さらに、法律が変わり、取得や所持が違法となった場合、未成年者も同様の危険に晒されることになると考えられる。

「児童を守る」ために作られたはずの法律が、本来、合法であるはずの行為をも犯罪へとねじ曲げ、保護対象たる「児童」を苦しめる、歪んだ構図が存在しているのだ。【了】

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