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PJ: 田中 大也

児童ポルノ規制推進で生じる、更なる「鑑定」の脅威と令状主義の危機
2010年11月04日 08:03 JST

【PJニュース 2010年11月4日】前回は、児童ポルノ禁止法特有の危険な仕組みである「鑑定」について書いたが、そのリスクがさらに高まる要素も十二分にある。具体的に言うと、このまま法的処罰の範囲が所持や取得へと拡大していくと、「鑑定」が更なる猛威を振るう危険性が高くなっていく。

2007年の段階では、鑑定の占める割合は、約25%だったが、そもそも鑑定は、ネット上の画像に対する行為など、加害者に当事性のない事案に多く発生する傾向が強いと考えられている。当たり前の話だが、誰かと「援助交際」するなりした結果発生した「製造」などの案件の場合は、被害者の身元が確定できるので、鑑定の必要はない。

ところが、ネット上の取得や所持といった事案の場合、ほとんどが被害当事者と関係のないケースで占められることになり、情報発信の性質上、「送り手」よりも「受け手」が関わる所持、取得罪の方が、はるかに多くの人間に適用されることになる。

例えば、ネットの掲示板に画像を貼ったとして逮捕されるのは一人だが、摘発されるまでに十日かかり、一日二万件のアクセスがあった場合、のべ二十万人が取得罪を適用される立場にもなりかねない。そして、非当事系事案が全体として多くを占めるようになるということは、「鑑定」によって確たる証拠もないまま、有罪判決を受ける人間が多数を占める危険が非常に高くなるということでもある。「年齢を示す確たる証拠はありませんが、見た目的に取り締まり側がアウトと言っているから有罪です。反証はできません」では、もはや民主国家の法治と言えるようなものではないようにも思えるが、こういったシステムで、数万、数十万人が逮捕されるという事態が迫っているというのが現実なのだ。

また、「単純所持」まで処罰範囲に加えるとなると、人を逮捕したり家宅捜索したりする際には令状が必要になるという、令状主義の原則も崩壊することにもなりかねない。

基本的に所持罪は現行犯に適用される場合が多いわけだが、現行犯相手であれば、令状は必要がないからだ。また「児童ポルノ」の場合、銃刀や違法薬物とは違い、定義が極めて曖昧である上、客観的で明確な特定がされずとも立件でき、しかも所持者は性質について認識できないという性質を持っている。

例えるなら、所持している人間はカフェインか違法なコカインかすら分からず、取り締まる側は分からなくても「コカインだ」と主張すれば立件できるという状況があり、そもそも違法かどうかの線引きすら曖昧という状況だ。

そんな前提がある中で、所持の名目があれば、令状すら必要とせず、現場の警察官の一存で、簡単に犯罪者扱いできるというのが、「児童ポルノ単純所持」罪なのだ。あらゆる冤罪の危険性は容易に予測することができるが、そもそも有罪の基準が緩すぎて、無罪判決を勝ち取ること自体が極めて困難になるだろう。

物証主義や令状主義は法治国家の大原則だが、「児童ポルノ規制推進」の名のもとに、権力の暴走を防ぎ市民を守るための安全装置が、今や危機に瀕していると言えるかもしれない。【了】

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PJ 記者