PJ: 田中 大也
年齢特定不可でも「判断」で有罪! 常態化する児童ポルノ「鑑定」
2010年11月01日 10:44 JST
【PJニュース 2010年11月1日】アメリカ領プエルトリコで、一人の男性が児童ポルノを所持していたとして逮捕された事件があった。一見、何の変哲もない児童ポルノ所持案件だったのだが、意外な展開を見せることになる。男性が所持していたDVDに出演していた女優が、事件の発生を受けて、自分が「児童」ではないことを証明、男性は釈放されることになったのだ。
この事件が和訳されると、ネット上で多くの反響を呼んだ。冤罪を晴らすために声を上げた女優の勇気が称賛される一方、判明した、年齢特定すらせずに児童と断じた当局の強引さに危惧を覚える意見が多くみられた。
実際、児童ポルノ扱いされたのが、公的に発売されたコンテンツではなく、出所不明のネット上に存在する画像や映像だったとしたら、逮捕された男性は、未だに児童ポルノ所持犯として扱われていることだろう。
この海外でのショッキングな事件は、実は対岸の火事ではない。
あまり知られていないが、国内でも児童ポルノかどうか判断するにあたっては、年齢特定を必要としていない。身分が分からなくても、医師などが見た目で判断(「鑑定」)することによって、「児童ポルノ」として事件化が可能なのだ。
かつて毎日新聞が報じたところ(「被害者1696人特定できず 07年検挙事件」にて)によると、2007年に検挙された児童ポルノ事件、567件のうち、年齢を特定せずに「鑑定」で児童ポルノ扱いしたのは143件、全体の約25%に達する。つまり、ごく当たり前のように、「児童ポルノかどうか年齢特定できなかった」にも関わらず事件化されているということになる。
客観的な年齢基準以外の「判断」で事件化されている現状は、あらゆる危険性を最大限に高めていると言える。年齢が明示化されていない以上、「鑑定」にあたる医師が、ミスをしていても、その判断は証拠として通ることになるし、何らかの悪意でもって、意図的に基準を緩め児童ポルノ扱いするということも可能だ。検察の捏造による冤罪が話題になっている昨今だが、年齢を示さなくていいのであれば、でっち上げはさらに簡単になる。対象の画像が二十歳だと分かっていたとしても、その証拠を出さずにおくだけでいい。鑑定に回されれば、「児童ポルノ」扱いされ、有罪に仕上げられる公算も高くなる。
そして、被告側は、「鑑定」での判定を受けた時点で、無罪判決を覆すことは極めて困難になる。何しろ、「判断」が証拠になってしまっているのだ。覆すには被写体が十八歳以上と実証するしかないが、警察すら知らなかった被写体の情報を、判決までの短期間で得ることは、非公開事項となる児童ポルノの性質上から考えても不可能で、反証は無理ということになる。なお、日本における児童ポルノの大多数は、13歳以上17歳以下の画像、映像で占められており、直接対面するわけでもない不十分な条件で、見た目での正確な判断は、そもそも困難だということも考慮する必要があるだろう。
客観的情報で実証されたわけではない「判断」により、反証もできない状況に追い込まれ、有罪判決を受けるという、恐るべき事態が常態化しているのが、現実なのだ。【了】
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