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PJ: 田中 大也

所持、取得罪設置で飛躍的に悪化する児童ポルノ禁止法の「特性」
2010年10月25日 08:44 JST

【PJニュース 2010年10月25日】直接被写体と向き合う「製造」関連の罪を別とすれば、いわゆる「児童ポルノ」関係の犯罪には、一つの「特性」がある。それは、実行者が「犯意」を持てない、ということだ。たとえ意図的にその行為をしたとしても、故意どころか、ミスをしたという過失の認識も持つことは困難だ。

「児童ポルノ」かどうかを判断する上でもっとも重要な、被写体の年齢について、当事者でない人間は、原則的に、知り得る材料すら持っていない。例えば、WEBサイトに、女性の画像が貼られていたとする。ある人は被写体の女性が20歳と考えるかも知れないし、22歳、あるいは16歳と考えるかも知れない。だが、その答えを知ることはできない。ご丁寧に「この画像は児童ポルノです」などと表記されているはずはないし、児童ポルノを貼りだすなと注意がなされていたとしても、管理人ですら、画像が児童ポルノかどうか、分からないはずだ。

実際、児童ポルノとは言うものの、その大多数は13歳以上17歳以下の画像や映像であることや、成長には個人差が存在することや、被写体と直接会うわけではなく、一枚の画像や映像という、極めて不十分な情報しか与えられていないこと、児童ポルノの定義そのものが広範かつ曖昧なことなどを加味して考えると、見た目での正確な判別など、ほぼ不可能と言っていい。

結局、その画像を提供するなりして、警察に逮捕される状況に陥ってはじめて、行為をした当人は違法性を認識できるということになる。しかし、その際でも、当然、どの画像が違法かという状況が、他のネット利用者に伝わるはずもなく、違法か合法かを判別する基準は、警察等のみが有している状況は変わらない。実写画像をWEBに貼りつけたりといった、児童ポルノ禁止法に抵触し得る行為をすることは、言うなれば「外が見えず、速度計すらない車で、警察ががっちり監視している公道を突っ走る」ような危険な行為だ。

それでも、現行法の基準では、処罰行為が画像の提供や公然陳列に限られているため、行為をしないことで、法に抵触する危険を何とか危険を回避することができた。しかし、画像の「取得」や「所持」までが処罰の対象になってしまうと、この情報化社会で暮らしている大多数の市民は、犯意すら持てないまま犯罪者になってしまう脅威と、必然的に直面してしまうことになるだろう。

ネット上の画像の閲覧は、情報を「取得」してはじめて成り立つ行為だ。故に児童ポルノかどうかの情報を有している警察は、違法画像へのアクセス記録を、そのまま「取得・所持容疑者リスト」に転用して検挙していくことができる。サイトへのアクセス数を考えると、現状の数百倍以上の人に、「犯意すら持てない」という児童ポルノ案件の「特性」が脅威となって襲いかかってくる危険性は高い。状況的に犯意すら持てない以上、法律を正確に守ることも、極めて困難なのだ。【了】

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