PJ: 田中 大也
数万人が逮捕も!? AVと児童ポルノ単純所持の意外な関係
2010年10月19日 09:00 JST
【PJニュース 2010年10月19日】「児童ポルノ禁止法」という法律がある。これは「児童ポルノ」の製造や提供などを禁じた法律だが、購入や取得、所持を規制しようとの意見も根強く、また、そうした規制案に対し多くの異論が出ているという現状がある。
実際に「取得」および「単純所持」に関しては、警察の捜査権の無用な拡大や冤罪の危険性、所持の禁止により、過去合法的に出版された公刊物が「焚書」の対象になってしまうことなど、非常に多くの問題が指摘されている。先日、単純所持における新たな懸念を意味する事件が発生した。
未成年者が別人の身分証を使い成人と身分を偽り、AVに出演したという事件が発生したのだ。こうした事例は、全体としてはごく僅かだが、歴史的にはさほど珍しいものではない。海外でもかつて、有名なポルノ女優が実は未成年者だったことが判明し、大騒ぎになったこともある。実際、見た目で正確に年齢を把握するのが至難である以上、他人の身分証明書を提示されたり、証明書を偽造されたりしてしまうと、製作にあたる側とすればどうしようもなくなることが多く、未成年者による「年齢詐称」問題は潜在的なリスクとして存在し続けていると言っていいだろう。
だが、「児童ポルノ禁止法」の規制範囲次第で、こうした年齢詐称問題は、被写体の虚偽問題や、製作者側のミスや潜在的リスクだけではなく、より深刻で普遍的な脅威になり得る。具体的には、「児童ポルノの単純所持」が処罰対象になってしまうと、「女優年齢詐称AV」を購入した何万人もの人が、犯罪者として法的処罰を受けるリスクに直面することになる。意思はどうあれ、「児童ポルノ」を持ってしまっているのだから、法的には合理性がある。
そして、「年齢詐称AV」に関しては、露見すれば、情報は警察等当局に流れるが、一方、処罰される側の市民が、「何の作品がアウトか」、「誰が未成年者なのか」という情報を知るのは困難だ。児童ポルノは通常のポルノと違って、「児童の人権侵害」問題なので、人道上、警察や報道機関が「この作品は児童ポルノです、この映像作品に出演しているAV女優は未成年者です」と広報してくれることはないため、正確な情報を知ることは難しいのだ。
一方、警察は当然、情報を抑えているので、摘発に動くことができる。また、前述したように、未成年者側の年齢詐称を完璧に防ぐことは困難で、故に、常に、数万人が逮捕対象となりうる状況が生み出される潜在的状況がある上、証拠の明示、集積が容易なネットでの売買が進んでいることも、摘発の現実性と脅威を高めているとも言える。
無数の問題があることで知られている「単純所持処罰規制」だが、「年齢詐称AV」事件の発生によって、本来「児童ポルノ」とは何の関係もなく、また購入する意思もなかった無数の市民が、ある日突然犯罪者扱いされるという脅威に直面していることが明らかになったと言えるだろう。【了】
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