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鹿児島・夫婦強殺:死刑求刑 遺族「両親と同じ方法で」 /鹿児島

 ◇否認、裁判員どう判断

 「願わくば両親と同じ方法で死刑に」と訴える遺族。「ぬれぎぬで奈落の底に突き落とされた。無実を証明していただきたい」と懇願する白髪の被告。鹿児島市の高齢夫婦強盗殺人事件の裁判員裁判で鹿児島地検は17日、白浜政広被告(71)に死刑を求刑した。否認事件での死刑求刑は裁判員裁判で初めて。裁判員は難しい判断を迫られることになった。【川島紘一、村尾哲、黒澤敬太郎、岸達也、遠山和宏】

 この日午前中に行われた意見陳述では、殺害された蔵ノ下忠さん(当時91歳)と妻ハツエさん(同87歳)の長女、中川えみ子さんらが出廷した。

 中川さんは、ハツエさんと撮った結婚式場での写真を大型スクリーンに映し出し「これが最期の写真になってしまった」と言葉を詰まらせた。2人の死後、自らも不眠が続き、精神的に不安定になり外出もままならず、半年間治療したという。「悲惨な殺され方をされ、2人がかわいそう。極刑で償って」と声を絞り出した。

 第1発見者の三男、蔵ノ下三郎さんも「父母を発見したショックで、今も眠れない日々が続き、裁判が近づくにつれめまいがした」と語った。この日の意見陳述もやめようかと思ったほどだという。陳述では発見時の様子を「早朝の部屋の中は地獄絵図だった」と振り返った。多数回殴られた跡がある両親の遺体のことは「骨つぼに納める時、あとかたもない頭骨を探すのに苦労した。抵抗できなかった父と母の命をどうして奪ったのか。犯人への怒り、憎しみはマグマのよう」と訴えた。

 四男の隆治さんは書面で意見を出した。平島正道裁判長の代読で「目が落ちくぼみ、大きな切り裂かれた傷口があり、もはや人間の顔ではなかった。残念でならない。想像すると心が暗く落ち込む。犯人には両親が味わったと同じように、スコップで殴って死刑にしてほしいとさえ思う」と意見陳述した。

 午後2時50分ごろ。「力の弱い高齢の2人がどうして反撃できたでしょうか」。論告を読む検察官の声に徐々に力がこもり、「遺族が思いを託せるのは裁判員、裁判官だけ。極刑をもって臨むしかない」と、白浜被告に死刑を求刑した。

 午後4時半、法廷中央に立った白浜被告は背筋を伸ばし「問答無用に逮捕された」と改めて無罪判決を求めた。その声は前日の被告人質問の時より力強く、自らの無実を確信しているようだった。

 予定より約2時間遅れの結審。引き揚げる裁判員の表情は一様に厳しく、これまでの疲れと、これから始まる評議の難しさを暗示しているかにも見えた。

 ◇「やるだけやった」 映像証拠申請「必要性あった」--被告弁護団

 鹿児島地裁で17日に結審した強盗殺人事件の裁判員裁判。白浜政広被告(71)の弁護団が地裁近くの県弁護士会館で会見した。これまで10回に及ぶ審理を振り返り「できるだけのことはやった」と総括。ただ「十分な準備をして法廷に臨めないこともあり、公判前から弁護団も会議を重ねて、正直きつい裁判だった」と本音を漏らす部分もあった。

 検察側の死刑求刑には「永山基準に従えば死刑求刑は当然考えられる。想定内」と話した。評議に向かう裁判員に対しては「判断は大変だと思うが、まっさらな状態で裁判官と一緒に評議をしてほしい」と話した。

 また、16日にNHKのニュース映像を無断で証拠申請したことについては「無罪を争っている事件なので必要性があったと思い使わせてもらった。公開されているものではないのか。特にコメントはない」と釈明した。【川島紘一】

 ◇死刑やむをえず 遺族感情に配慮--地検

 公判終了後、鹿児島地検の江藤靖典次席検事、知花宏樹主任検事ら4人がそろって取材に応じた。死刑求刑について江藤次席検事は「事案の行為態様、結果、被告の固有の事情などを考慮し、慎重に吟味を重ねたが、やむをえないものだった」とコメントした。

 立証については「被告が『現場に行ってない』と主張していて詳細がわからない部分はあるが、明白に認められる部分を立証した」と話した。

 論告を読み上げた知花主任検事は「1年半、裁判を待った遺族の思いを伝えたかった」と遺族感情に配慮したことを明かした。

 ◇補充裁判員解任

 鹿児島地裁は17日の結審後、引き続き補充裁判員をする必要がないと判断して、裁判員法に基づき、1人の解任を決定した。

 ◇当選確率15倍、傍聴求め786人

 論告求刑公判の一般傍聴席52席を求めて17日朝、786人が長蛇の列を作った。当選確率は約15倍だった。

 初公判の傍聴希望者684人と比べ、100人以上増えた。公判での証人尋問などを経て事件の真相が明らかになるにつれて、改めて市民の関心が高まったとみられる。

毎日新聞 2010年11月18日 地方版

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