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老夫婦強殺裁判/被告、多弁130分

2010年11月17日

 鹿児島地裁で16日にあった老夫婦殺害事件の裁判員裁判の被告人質問で、強盗殺人罪などに問われた白浜政広被告(71)は、初公判以来、2週間ぶりに証言台に立った。きっぱりとした口調で改めて罪を否認し、計130分にわたり、冗舌に質問に答えた。
 入廷後、平島正道裁判長から証言台に座るよう促されると、被告は背筋を伸ばしていすに座り、裁判員らを見つめた。質問には涙声になったり、身ぶり手ぶりをまじえたりして回答。裁判長に「質問されたことだけ答えるように」と制されるほど、多弁だった。
 初公判から計27人に実施された証人尋問を含め、裁判員が直接質問する場面はなかった。ただ、男性裁判員と相談した上で、裁判長が「事件があった日の前後の記憶がちゃんと残っているみたいだが、取り調べで何度も聞かれ、記憶を整理してきたからか」と質問した。被告は「預かっている調書があるので」と回答。「調書を確認してきたということか」と尋ねられると「はい」と述べた。
 初公判から審理を見守った作家の佐木隆三さんは「裁判員は自分で確かめたい、聞いてみたいと思うものだと信じていたので、意外だった。すでに心証形成ができたのだろうか」と話した。これまでの審理を振り返り、「検察の指紋・掌紋に関する鑑定は、私は十分だと思っている」と話した。
 公判では、5日にあった現場検証の調書を裁判長が読み上げた。侵入経路や物色された状況の確認や、豆電球だけでの室内の見え具合などを検証したことが明らかにされた。17日の公判では、被害者遺族が意見陳述する。弁護側、検察側と被告の主なやり取りは次の通り。

 ■弁護側の被告人質問
 ――(7年前に)強盗致傷事件を起こした動機は。
 「サラ金からの取り立てがきつかった」
 ――鹿児島に戻り、お金があるときはどうしたか。
 「パチンコと、飲みに行っていた」
 ――(事件があった)昨年6月18日はどうしていたか。
 「朝5時に起きて散歩した。午後2時ごろ家に帰らず(駐車場に置いた)車に戻った。その後、谷山方面にウオーキングした。(午後)6時ごろ駐車場に帰ってきて車の中で仮眠した」
 ――なぜ家に帰らなかったのか。
 「姉と顔を合わせたくなかったから」
 ――19日朝は何時に帰宅。
 「8時」
 ――姉に渡す年金を使ってしまったことは話したか。
 「夕方。ごめん、パチンコで負けちゃったからねと」
 ――取り調べでどんなことを言われた。
 「本当のことを言わなければ、被害者は行き場がなくてさまよっている。成仏させてあげなさい。あなたは鬼畜生だと」「あらん限りの声を出して怒鳴られた」

 ■検察側の被告人質問
 ――現場に行ったことは。
 「ありません」
 ――誰かをかばったり、誰かに脅されたりしていないか。
 「ありません」
 ――強盗殺人罪の法定刑をわかっているか。
 「わかっています」
 ――物色しただけとは違う。
 「わかります」
 ――それでも供述を変更する気はないか。
 「ありません」
 ――被害者を知っていたか。
 「全く知りません」
 ――前科の強盗傷害事件の原因がパチンコ。深く反省をしたのに、(刑務所)出所後パチンコをしたのはなぜか。
 「周りに誰も知っている人がおらず心が不安定になった」
 ――(現場に足跡が残っていた)安全靴を買ったことは。
 「ありません」
 ――携帯電話の電話帳登録と着信発信履歴がすべて消えていたが、なぜか。
 「携帯を使わないと思った時に、(携帯のデータを)全部消してしまった」

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