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否認被告に死刑求刑、裁判員3週間の重い評議へ


 裁判員の目の前で「絶対にやってない」と訴え続けた被告に、検察側が求めたのは死刑だった。17日に鹿児島地裁で結審した高齢夫婦殺害事件の裁判員裁判。重い判断を迫られる6人の市民たちは、12月10日の判決に向けて長く厳しい評議に入った。

 遺族の意見陳述には、蔵ノ下忠さん(当時91歳)と妻ハツエさん(同87歳)の4人の子ども全員が参加。「2人を殺してまで奪う物がありましたか」。強盗殺人罪などに問われた白浜政広被告(71)=写真=の前に立った長女(65)は、怒りで声を震わせた。忠さんが、育てた野菜などを子どもたちに渡すのを楽しみにしていたなどと語り、モニターに麦わら帽子姿で笑顔を見せる忠さんの写真が映し出された。

 三男(60)は裁判員に向かって「死刑をためらうかもしれないが、遺族の心の整理のためにも、死刑にすべき犯人は死刑にするしかない」と強い口調で述べた。

 続く論告で、検察官は「2人の遺体があった和室を、現場検証で見たときの状況を思い出してほしい。その光景は冷静に見られないほど残虐だったはず」などと裁判員に語りかけた。

 弁護側は最終弁論で、検察の立証に対する疑問点を書いた紙をホワイトボードに次々に張り出し、「ずさんな捜査で分からないことだらけ」と強調。「白浜さんの命がかかっている。納得するまで話し合い、一点の曇りもない結論を出してほしい」と呼びかけた。

 白浜被告は遺族の意見陳述にも表情を変えず、死刑求刑の瞬間も動揺した様子はなかった。最終意見陳述では「痛ましい被害に遭われたご夫婦には、一人の人間として心からご冥福をお祈りします」と述べ、「私のぬれぎぬを晴らし、苦しみを取り除いていただきたい」と訴えた。

 公判中、裁判員たちは硬い表情を崩さなかった。死刑求刑の際には、身を乗り出して白浜被告の方をのぞき込む人も。10日間の審理で、裁判員が裁判官に話しかけ、裁判官が代わりに証人や被告に質問するような場面は度々見られた。ただし、裁判員が直接質問することは最後までなかった。

2010年11月18日  読売新聞)
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