【コラム】イギリスがうらやましい(下)

 これにより、大学支援予算も40%程度減らされることになった。国家の不渡りという災厄を避けるため、社会全体が少しずつ痛みを分け合おうという趣旨だった。それでも、大学教育の水準が低下するのを避けるため、授業料引き上げのカードを切ったというわけだ。そこには、市場原理が導入されれば、経営状況の良くない大学は自然と淘汰(とうた)される、という考えも込められていた。

 韓国の場合、昨年の財政赤字は43兆2000億ウォン(約3兆1920億円)で、GDPの4.1%に達する。財政赤字の累計額は359兆6000億ウォン(約26兆5705億円)だが、公企業の負債などを含めると、実質的に国家が責任を負うべき負債の総額は1637兆4000億ウォン(約121兆円)に上るという主張もある。予算政策処によると、今年の福祉支出は115兆ウォン(約8兆4760億円)で、韓国政府の総支出の35.2%を占めたという。05年以降、福祉支出の増加率は年平均13.1%で、これは韓国政府の総支出増加率(8.7%)の1.5倍に当たる水準だ。進歩・保守を問わず、無償給食・無償教育・無償医療など善意のばらまき政策に固執してきたというわけだ。

 統一にも備えなければならない韓国の現実を考えると、健全な財政維持への取り組みは絶対におろそかにはできない。今のように、与野党が「70%福祉」や「100%福祉」を持ち出してごますり競争を続けてばかりで、財政赤字について真剣に考慮しないのなら、いつか国自体がよろめくかもしれない。それだけに、財政破たんの可能性を減らすために「石にかじりつく覚悟で」反ポピュリズムの道を選んだイギリス政府が大きく見えて、うらやましい。

趙正薫(チョ・ジョンフン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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