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緩和ケア、早期から
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患者・家族の苦痛、予防と軽減
終末期がん患者に限った医療と思われがちな「緩和ケア」。本来は病気の時期に関係なく、患者・家族が抱える様々な苦痛を軽減し、生活の質を向上させるものだ。そんな支援を実現するため、早期から診断・治療と並行して緩和ケアを提供しようという取り組みを取材した。(本田麻由美、写真も)
在宅患者らに試食会
「小松菜のスープも試食してみませんか?」
金沢市の北部にある石川県済生会金沢病院4階の外科病棟。その一角にある食堂ホールでは、「がん療養中のお勧めメニュー」を紹介する看護師や栄養士らと、「これなら食べられるよ」と談笑する患者、家族らの声が響いていた。
この試食会は、がんで在宅療養中の患者・家族や入院患者らに、治療や体調によって食欲がない時でも食べやすく、栄養価の高い食事を提案することで療養生活を支えようと、「石川県在宅緩和ケア支援センター」が企画した。今回が3回目で、「アンケートから生活の中で困っていることを聞き出し、適切なサービスにつなげる狙いもある」と、同センター相談員で看護師の木村美代さんはいう。
この日は、酸味の効いたトマト
WHOが定義変更
緩和ケアというと一般に「終末期の特別な医療」とのイメージが強い。しかし、世界保健機関(WHO)は2002年に「生命を脅かす疾患に伴う問題に直面する患者と家族に、病気の時期に関係なく、痛みや様々な苦痛の予防と軽減を図り、生活の質を向上させるアプローチ」と定義を変更。国内でも、07年に施行された「がん対策基本法」に「早期から適切に実施する」と明記されたが、旧来のイメージが
しかし、年間500件近い相談を受ける中で、専門的な緩和ケアが必要となる前から、副作用や食事など療養生活の中で様々な苦痛を抱えている患者・家族が多いことを思い知り、木村さんは「
緩和ケアは、基礎知識や技術を学んだ一般医療者が早期から痛みや症状に対応する基本的な緩和ケアと、困難な痛みなど解決の難しい治療・ケアを専門医や専門看護師が行う専門的な緩和ケアに分けられる。「両者を充実させていくことが重要だと国際的に考えられている」と、筑波メディカルセンター病院の志真泰夫・緩和医療科診療部長は説明する。試食会は基本的な緩和ケアにあたるが、国内では、こうした取り組みが進んでいない。
国は現在、「がん対策推進基本計画」の重点課題として、基本的な緩和ケアを提供できる医師を増やそうと「緩和ケア研修会」を展開。今年3月末で約1万1000人が修了したが、看護師や薬剤師への研修プログラムは始まっておらず、海外のような介護職への研修もこれからだ。
志真部長は、「緩和ケアは生死にかかわる病気と共に生きていくための知恵。医療体制の整備を進める中で、正しい認識を広め、誰もが抵抗なく受けられるものにしていく必要がある」と話している。
◆国の「がん対策推進基本計画」は、厚生労働省のホームページ http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_keikaku.html |
◆緩和ケアの考え方や研修会については、日本緩和医療学会のホームページ http://www.jspm.ne.jp/ |
(2010年11月16日 読売新聞)
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