広島県北広島町の臥龍山で昨年秋、島根県立大1年だった平岡都さん=当時(19)=の遺体の一部が見つかった事件は、平岡さんの行方が分からなくなって26日で1年を迎えた。島根、広島両県警の合同捜査本部の関係者らへの取材では、その手口の異常性、残虐性などがあらためて浮かび上がる。一方で、捜査に大きな進展はない。夢を抱き大学に入学して半年余り、平岡さんに何が起こったのか。
▽帰宅途中
昨年10月26日午後9時16分ごろ、アルバイト先の浜田市のショッピングセンターを出たのが防犯カメラで確認されている。学生寮までの約30〜50分、約2・5キロを徒歩で帰宅していたとみられるが有力な目撃情報はない。帰宅ルート付近の国道9号バイパス側道の側溝から左足の靴が見つかった。通販の購入履歴などから平岡さんの靴とみられ、付近で連れ去られた可能性が高い。
▽死体遺棄
行方不明から11日後の11月6日、約25キロ離れた臥龍山で遺体の一部を発見。他の遺体の一部も相次ぎ見つかった。血が落ちていない周囲の状況から、別の場所で損壊され、運ばれたとみられている。山では2日夕から3日にかけ積雪、遺体の状況から遺棄はそれ以前の可能性が高い。日中は訪れる人も多く、夜間から早朝にかけ運ばれ、犯人に一定の土地勘もあるとみられる。
▽犯行状況
司法解剖で死亡推定は26〜31日。遺体の状況から連れ去りから近い時間に死亡したとみられる。頭には殴られたような跡があり、首を締められた可能性が高い。損壊には鋭利な小型の刃物が使われたとみられるが、販売ルートから有力な情報は無い。
体に刃物などさまざまな方法で傷つけられた跡もあった。犯行場所は特定できていない。損壊、遺棄の執拗(しつよう)さ、異様さ。つかめぬ動機が捜査難航の要因になっている。
▽遺留品
遺体の近くにあった平岡さんの血がつき、熱で縮んだビニール片などは袋の一種と見られ、流通ルートなど捜査を続けたが特定できず。携帯電話は見つからず、不明となった夜からつながらなくなった。パソコンを含め、当日夜の待ち合わせを約束した形跡は無い。捜査可能範囲内での通信記録に不審な点は無かったという。
▽交友関係
香川県坂出市出身。高校卒業後、約7カ月の大学生活で、交友関係は狭い。「授業に熱心な学生」と教授らは口をそろえる。トラブルもなかった。学業やアルバイト、ボランティアサークルの活動のほか、9月から、興味のあった国際交流や動物愛護のボランティア関係への活動を本格的に始めたばかり。島根県警の岩田晴雄刑事部長は、捜査を難しくする要因の一つを「坂出、浜田、臥龍山と三つの接点があり、捜査する範囲、対象が広範にわたる」とする。
▽捜査状況
寄せられた1690件の情報の捜査や、坂出、帰宅ルートなど繰り返し聞き込みを続ける。犯行の状況から一人暮らしの若い男を中心に、異常な犯行の特性を踏まえ広く捜査の網をかける。浜田と臥龍山を結ぶルートの通行車両の捜査もポイントとなっている。
浜田女子学生遺棄事件
2009年10月26日夜、島根県立大1年平岡都さん=当時(19)=がアルバイト先のショッピングセンターを退店後、行方不明になった。11月6日、約25キロ離れた広島県北広島町東八幡原の臥龍山山頂付近で遺体の一部が見つかった。島根、広島両県警は浜田署に合同捜査本部を設置し死体損壊・遺棄事件として捜査を開始。今年9月末までに延べ6万人の捜査員を投入、140人態勢を維持する。事件解決につながる情報には懸賞金もかけられている。
|
【写真説明】アルバイト先のショッピングセンター周辺であった検問で、通行車両に情報提供も呼び掛ける警察官(25日午後9時40分、浜田市港町)
|