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きょうの社説 2010年11月21日
◎金沢市長選告示 新幹線生かす成長戦略語れ
きょう告示される金沢市長選は、新たな市長の任期が2014年度の北陸新幹線開業へ
向けた正念場の4年間となる。新幹線の開業は金沢の将来を方向付ける歴史的な転機といえ、県都発展の起爆剤になり うる。この千載一遇のチャンスをどこまで生かすことができるか。次の市長は新幹線時代へ橋渡しする重要な役割を担っている。候補者はそのことを認識し、開業を生かす県都の成長戦略を市民に分かりやすく語ってほしい。 首都圏との移動時間が短縮される北陸新幹線は、石川県、北陸全体にとって大きな節目 だが、当面の終着駅になる金沢には、とりわけ可能性が広がっている。北陸の拠点都市から地方全体を代表する都市へと、さらに飛躍できるかの岐路でもある。金沢に勢いなくして石川、北陸に勢いは生まれないだろう。次のリーダーに望みたいのは、金沢が牽引役になって北陸全体を浮上させるというくらいの気概や使命感である。 平成に入り、金沢の都市構造は金大や県庁移転、大型店の郊外進出などで大きく変化し た。金沢の都市づくりの課題は突き詰めて言えば、中心市街地のにぎわい創出と、いかに歴史・文化資産に磨きをかけるかの二つに尽きる。 金沢城跡、前田家墓所、辰巳用水などが国史跡になり、城下町の個性を際立たせる取り 組みは軌道に乗ってきたように見える。一方で、都心の再生は他の地方都市と同様、打開策が見いだせず、空き店舗、老朽ビル対策などが重い足かせとなっている。商業活動やオフィス需要の停滞が続けば、都市のブランドイメージも低下し、歴史や文化を生かした街づくりに水を差しかねない。都心の空洞化に歯止めをかけることは金沢市政の最重要課題といえる。 現職の山出保氏にとっては、5期20年の実績が問われる選挙でもある。市議会9月定 例会では、議員から市長任期を制限する条例案が出され、否決された。多選問題については、議会が条例で制限をかけるよりも、有権者が判断するのが本来の筋である。これまでの多選をめぐる議論は、投票結果で一定の結論が示されるだろう。
◎日米防衛協力 憲法問題に踏み込めるか
日米両政府は、日本有事の際の防衛協力について具体的な協議に着手する方針という。
日米同盟強化のため、現行の日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定を視野に入れているが、日本としては、日米同盟のより重要なテーマである集団的自衛権の行使に関する憲法解釈問題なども忘れてはなるまい。日米安保条約には、米国の対日防衛義務が明記されている。しかし、例えば、尖閣諸島 を含む南西諸島での有事を想定した日米共同対処の具体的な計画や戦術は詰められていない。同盟の強化というなら、こうした不備は早期に解消しなければならない。 日米防衛協力の在り方に関しては、政府の新安保・防衛力懇談会が今夏、菅直人首相に 提出した新防衛計画大綱に関する報告書で重要な提言を行っている。 その一つは、集団的自衛権の行使を禁じる政府の憲法解釈の変更である。米艦艇の防護 や米国向け弾道ミサイルの迎撃を、国益に照らして実施するかどうかを考える選択肢さえない現在の状況を問題視し、「国の防衛や同盟維持の必要性から出発して柔軟に憲法解釈や制度を変え、日米同盟にとって深刻な打撃となるような事態が発生しないようにする必要がある」というのである。 報告書はさらに、日本の安全を脅かす「周辺事態」の際の米軍への後方支援について、 武器・弾薬の提供が出来ない現状を見直し、「現実的かつ能動的な協力」を可能にするよう求めている。 今年は日米安保条約改定50年の節目の年で、菅首相は日米同盟深化の新たな共同声明 を来春発表することでオバマ大統領と合意している。今後50年を見据えた同盟の深化を本当にめざすなら、憲法解釈の壁を越えることを求める新安保・防衛懇の提言を真正面から受けとめる必要があろう。 また、米政府は尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であることを明言したが、それは尖 閣諸島が日本の施政権下にあることが大前提であり、施政権をより明確にする日本の自主防衛措置の強化が重要なことを認識したい。
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