巨大な隣人中国の実力 政治、経済、軍事ともに日本を丸飲みする

2010.11.20


富裕中国の象徴・上海。中国の経済力は将来、米国をも追い抜く【拡大】

 沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で、その傍若無人ぶりが浮き彫りになった中国。強硬な政治力と急速に発展する経済、拡大する一方の軍事力−。日本を丸飲みしそうなほどの中国の実力を改めて検証する。

 神戸の海上保安官(43)が巡視船と中国漁船との衝突映像をネット上に流出させて約2週間がたった。いまも国内では余波が続いているが、気になるのは中国政府や中国国民が一連の事件をどのように受け取ったのかということだ。

 在日中国人向け華字紙の編集長はこう話す。

 「中国政府は菅内閣の弱腰を見越したうえで、映像にはまともに取り合わず、『中国領海で日本の巡視船がぶつかってきた』と信じる国民に対しても(正確な)情報を伝えていません。中国政府の関心は、すぐに胡錦涛国家主席の欧州訪問やAPECなどでの欧米首脳との会談に移り、尖閣問題はおろか菅首相との会談もほとんど報道されませんでした」

 中国の国内では、累計6兆円に及ぶ日本からのODA(政府開発援助)も伝えられず、日本の存在感は薄れる一方。「もはや日本は完全に無視されています」という。

 あくまで強硬姿勢の政治に対し、経済面の実力はどうか。

 『中国経済 真の実力』(文春新書)などの著者で放送大名誉教授の森谷正規氏は、「『中国がクシャミをすれば日本がカゼをひき、中国がカゼをひけば日本が肺炎になる』状態に近づきつつある」とし、「もはや引き返せないところまで来ている」と指摘する。

 森谷氏によると、中国の経済は将来、米国をも追い抜く勢いだという。

 「蓄積がさほど求められない情報通信の分野で伸び、蓄積が求められる工業技術の核心分野では、日本の技術が流出しています。人件費は低く抑えられている一方で、市場規模は巨大。購買力平価でみたGNP比は日本の3倍近くで、2020年半ばには米国と肩を並べ、その後は引き離していくでしょう」

 すさまじい勢いだが、その反動から「国民の暴動による国家の崩壊が唯一最大のリスク」とも指摘する。

 政治、経済分野の国力が増すに連れて中国が狙うのが領土領海の拡大。領海侵犯などの不法行為に対し、日本は毅然な態度を取らなくてはならないが、その後ろ盾となる日米関係はギクシャクしたままだ。

 元航空幕僚長の田母神俊雄氏は「日米安保はあくまで『抑止力』が前提。それが破綻した時に米軍がどう動くかは未知数」と前置きし、次のように解説する。

 「中国はすでに世界ナンバーワンの米国債保有国であり、核保有国でもある。いざというときに米国を牽制する強力なカードを2枚も持っています。その中国に対し、米国が日本の無人島(=尖閣諸島)を守るために軍事行動に出るかは疑問。日米安保は、中国との軍事バランス上はまったくアテになりません」

 単純な軍事力の比較では、いまのところ「海、空ともほぼ拮抗している」(田母神氏)が、中国は2020年までに原子力空母2隻と通常の空母2隻を配備する予定。

 「これが実現すれば、尖閣に上陸されたときに日本は実力阻止ができなくなる。『自分の国は自分で守る』という考えの下、今後5−6年のうちに自衛隊も中国と同等規模の空母を導入しない限り、軍事バランスは瓦解するでしょう」と田母神氏は警告する。

 政治、経済、軍事力で、いずれも日本を凌駕しつつある中国。政権運営すらおぼつかない菅内閣が対峙する相手としては、あまりにも分が悪い。

 

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