「価格は安いのだけど…」という印象もあるハイアール。そのハイアールが今年9月、最新鋭のドラム式洗濯乾燥機を日本で売り出すと大々的に発表しました。強調していたのは「日本人技術者が開発した」という点。つまり性能もいいですよということです。背景には何があるのか。この点を今回は追跡しました。
番組で紹介したように、ハイアールも含めていま、中国や韓国の会社に職を求める日本人技術者が増えています。こうした傾向が最近とりわけ顕著になっているといいます。なぜか。リーマンショック以降の不況のため日本のメーカーが大規模なリストラを進めたからです。早期退職に応じたものの日本で仕事が見つからない技術者。日本の高い技術力がほしいアジアのメーカー。両者の思惑が合致し大量の技術者が海外に流出しているのです。
いまでは高い技術力がなければ日本人だからといって即採用というわけにもいかない。これもグローバル化の一断面なのでしょう。
それにしてもハイアールの取材には苦労しました。取材に応じない理由もはっきりしません。国内ではその技術力を誇るハイアール。日本人技術者がいることを強調されたくないということなのか。尖閣列島をめぐって日本と中国の関係が緊張していることも背景にあるのでは、と勘繰りたくなるほどでした。
技術力は日本の製造業が生き残るための最後の砦といっていいでしょう。しかし、その技術力の流出が続けば、それさえも崩れていく恐れがあるのです。「日本の製造業に果たして未来はあるのか」。そう思いながら飲んだ「青島ビール」は思いのほか苦い味がしました。
※この記事は、NHKで放送中のドキュメンタリー番組『追跡!AtoZ』第56回(11月13日放送)の内容を、ウェブ向けに再構成したものです。
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【次回の番組放送予定】
11月13日(土)午後10時00分~10時29分
「漂流する主婦 ~改正貸金業法の波紋~」
2006年以降、多重債務問題の解決を目指して、段階的に施行されてきた改正貸金業法。今年をもって完全施行となり、金利は20%以下、年収の3分の1を超える貸し付けが原則禁止された。
しかし、この上限金利と貸し出しの総量規制により、必要な融資を受けたくても受けられない「借金難民」が大量に生まれている。中でも大きな影響を受けているのが主婦たちだ。
これまでに、大半の貸金業者が、専業主婦への貸し出しを止めた。夫の収入頼みで、貸し出しの事務手続きも複雑になるためだ。「どうすればいいのか」「頼むから金を貸してくれ」。いま、カード会社には、主婦たちの悲痛な叫びが殺到している。
こうした中、膨張しているのがヤミ金市場。法の網の目をくぐった手口で融資を謳い、莫大な利益をあげる。主婦専門のヤミ金を始めた業者もいる。
「借金難民」となる主婦、法制度の不備をついて暗躍するヤミ金業者たち。改正貸金業法の思わぬ波紋を追う。
◎番組ホームページ http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/
※今後の放送予定(再放送含む)も確認できます。番組へのご意見・ご感想も大募集。
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