2010-11-20
■Googleのリクルーターと話をした またはぼくがGoogleに行かない理由
「なんでだろうかね、あなたがたは懲りないっていうか」
ぼくは呆れたように言った。
先週できたばかりの真新しい会議室。
白と黒のツートーンカラーで統一されたその小さな部屋で、ぼくは一人の男性と向き合っている。
彼はGoogleのリクルーター、名をK(仮名)と言った。
「清水さんのようなプログラマにぜひお声がけしたくてですね」
Kはそう言った。
「でもさ、前にも来たじゃない。それで丁重にお断りしたはずですよね。そのときも言ったんだけど、僕はもうプログラマじゃないんですよ」
「えぇっ、そうなんですか?でも募集しているのはマネージャなんですよ」
「マネージャ!・・・そもそも、僕が自分の大切な仲間と、最高に面白い仕事を放り出してまで、おたくの会社のマネージャをやるメリットってなんなんだろう?」
「ええと・・・そうですね。・・・うちの会社、自由ですよ。コアタイムとかありますけど、誰も守ってないし」
「コアタイムあるんですか?」
「ええ。11時から16時まで」
「じゃあうちのほうが自由だな。コアタイムは14時から17時だもん」
「えええっ」
「だって午前中に会社に来る必要ってあります?道は混んでるし電車は鮨詰め。そんなことで疲労するようだったらもっとだらだら来ればいいじゃないですか。もちろん、朝来て夕方帰りたいという社員もいるから、その場合は調整していますけどね。ワーカホリックから主婦まで働ける自由度はありますよ」
「なるほど。うーん、でもめちゃめちゃ優秀なプログラマ居ますよ。技術力ありますよ」
「そうそれ!・・・・Googleは技術力ある・・・その話が正直、よくわからない。優秀な人を集めてるのかもしれないけど、アウトプットが見えてこないんだもの。たまーに出てきたと思ったらIMEでしょ?あれは大学の研究みたいな感じじゃないですか。ATOKよりずっといいとかね、そういうものでもないし。なんか本気が感じられないというか。あとはWeb関係ばっかりでねー、なんていうか、でかいこと言ってるわりには世間が狭いなあ、というのが僕のGoogleさんに対する印象です」
「ええっ・・・そうですか。うーん」
「たとえばほかの会社の話でいえば、マイクロソフトとかね、Microsoft Researchとかでちゃんと基礎研究やって新しいコンセプトも打ち出しているじゃないですか。nVidiaとかね、ハードウェアに革命的な進歩をもたらしてますよね。しかも毎年毎年なにか新しい技術軸を打ち出してる。ソニーにはCSLがあるしIBMにも大和がある。その点、Googleさんはね、まあ差し迫ったものもないんだろうけど、なんか基礎的なところですげえことやってる、って感じがいまいちわからんのですよ。たぶんあれだけ社員がいればやってる人もいるんだと思いますが見えてこないんですよね」
「まあWaveもなんかポシャッちゃいましたしね」
「あれもまあ別に新しい技術でもなんでもないじゃないですか。見せ方がちょっと新しかっただけでね。あれに関連する特許をマイクロソフトで既にいくつかとってるはずですよ。10年も前にね。あのころは80番ポートでいかにリアルタイム通信するかというトピックが熱かったから。たとえばMSNメッセンジャーも内部的にはWaveと同様の仕組みをもってるはずですよ。それをプラットフォーム化するというあたりは珍しかったのかもしれませんが」
「うーん、でも、けっこう好きなことできますよ」
「好きなこと?でも、いま僕が好きなことできてないように見えますか?いま、仕事めちゃくちゃ楽しいですよ。世界で自分にしかできない仕事をやってると思ってますよ。これ以上楽しいポジションはちよっと他にないんじゃないかな。たとえばですよ、僕がもし、御社に行ってマネージャをやったとして、そこでなにを作るんですか?IME?乗り換え案内?GMailの新機能の日本語化?
どれも誰にでもできそうな仕事じゃないですか」
「うーん。そうなんですよねえ。実は、だいたい、未踏の人に話をしにいくと、みなさん今の仕事が楽しいから転職する気はないって仰るんですよ」
「まあそうでしょうね。未踏のスーパークリエイターくらいになるとそれなりに自信があるだろうし、なにも好き好んで人の会社で働きたいと言う人は珍しいでしょうね。しかも安い給料で」
「給料はねえ・・・そりゃ経営者に比べたら桁が違いますからねえ」
「でしょ?だから僕がいまの職場を放棄することはありえないですよ」
「いや、それはねえ・・・実は先週、間違って前のオフィスに行っちゃったんですよ」
「あ、そうなんですか」
「それでエレベーター降りてすぐオフィスで、パーティションのひとつもなかったでしょ。それ見てね、もう実は諦めてました。こんなところで50人も働くような会社だったら、そりゃ面白いよなあと」
「ははあ。なかなか鋭いことを仰る」
「でもね、私も仕事柄本当にたくさんの人と会うんですけど、みんなすごく優秀なんですよ。でも本試験になるとものすごい落とされるんですね」
「ほほう。それはなぜ?」
「英語ですねえ。やっぱり英語ができませんと」
「そんなのね、僕はバカバカしい話だと思いますよ。英語がしゃべれる事が高等な知性の証みたいなのってのはね、英語が准公用語の国の理屈でしかなくてね。日本人として生まれてきたんだから、日本語ができりゃあ上等ですよ。英語はね、読めなきゃ困るけど、読めさえすれば仕事にはなんの支障もない。英会話の能力まで技術者に求めるのは間違いです。そんなことを勉強する暇があったら、もっとコードを書いた方がいい。英語の部分は専門家が効率的に補佐すればいいんです。日本人なんだからね、あとから勉強して他の勉強を一切せずに英語だけをずっとやってたとしても、英語が本当に使えると言えるか微妙ですよ。たぶんネイティブの中学生にも及ばないでしょうな」
「まあアメリカの会社ですからねえ」
「なんかね、英語に流暢な技術者だけ集めるって、まるでCPUを集めるが如しですよ。できるだけクロック耐性の強いCPUが欲しい。だから世界中から人をかき集めるんだけど、そうやって採用した人材は世界中どこにいても、マウンテンビューで仕事をするのと変わらないわけで。現地で採用するできの悪い学生よりはちょっとマシなパーツという感じ。だとすれば世界中に散らばってる意味がないですよ。インテルみたいにね、本家アメリカのチームが設計したPentium4をイスラエルのチームが設計した廉価版のPentium Mが消費電力あたりの性能面で勝っちゃうとかね。で、いま本流はイスラエルチームの開発したCore MAがベースになってる。イスラエルの人は英語しゃべれそうだけど、Googleが表明しているみたいに世界中で同じように働けるようにしたら、Googleはせっかくの国の多様性を平らにして、みんなで同じものを作ってるみたいになるんじゃないかな。まあこれはあくまでイメージですけどね」
「そういうのありますよね」
「でもまあ、Googleに居たらさ、まあハクは付くよね。ハクってやっぱりある程度は大切なのよ。実績がないときはなおさら。新卒だったら僕も喜んでGoogle行ったと思う。なにしろ世界最強の会社でしょ。そりゃどんなもんか見たいしさ。実際、僕はそういう理由で大学中退してマイクロソフトの嘱託やってたわけだし。でもいざ入ってみると、意外とつまんないんですよね」
「実はこないだすごく優秀な学生さんがね、英語がダメで落ちちゃったんですよ。うちの試験を」
「そりゃもったいない」
「だからね、私、言ったんです。UEIっていう会社がある。まだ小さいけど、面白そうだから、そこにいったらどうだって。・・・・・どうですか?」
「あなた、なにそれ。すごくいい話じゃない。面白いですな。そういう人は大歓迎ですよ。というか、あなたがうちに来て採用担当になってくれたらいいな。どうですか?Googleよりいい給料出せるかもよ」
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