県知事選挙が盛り上がらない。沖縄の針路を左右する極めて重要な選挙であるにもかかわらず、選挙の意義に見合うような熱気が、感じられない。一体、どういうことなのだろうか。
県知事選は復帰後、10回行われているが、11回目の今回は、過去のどの選挙と比べても、特異さが際立つ。
2人の有力候補が米軍普天間飛行場の移設問題で、「県外」「国外」への移設を主張し、争点がぼやけてしまったことが、この選挙の最大の特徴である。
辺野古移設の姿勢を変えていない民主党本部は、どの候補も推していない。沖縄の県知事選で政権与党が自主投票を決めるのは初めてだ。自民・公明推薦の候補が、自民党本部に推薦の申請をしないのも例がない。
普天間問題がもたらした複雑な「ねじれ」が、有権者を戸惑わせ、選挙運動の盛り上がりにブレーキをかけているのは明らかだ。
菅直人首相はオバマ米大統領との首脳会談で、「5月の日米合意をベースに沖縄県知事選後に最大の努力をする」と語った。知事選は現職の仲井真弘多氏と、前宜野湾市長の伊波洋一氏による事実上の一騎打ちとなっているが、誰が当選しても、選挙後の政府との交渉は難しいものになるだろう。
「どうせ動かないのだから」と選挙を棄権する人が増え、投票率が下がるようなことがあってはならない。
現実を変えることができるのは、選挙によって示される有権者の民意である。
過去10回の知事選で、例外的に投票率が下がったケースが2回ある。
革新陣営が分裂し、稲嶺恵一、吉元政矩、新垣繁信氏らの争いとなった2002年の知事選(投票率57・22%)と、大田昌秀氏と翁長助裕氏が争った1994年の知事選(投票率62・54%)である。
両選挙に共通するのは、大差がついたことだ。選挙に対する有権者の関心が薄れ、投票率が低下した結果、大差がついてしまったのである。
今回の選挙はそのような状況にはない。そこまで投票率が下がるとは考えにくい。
ただし、普天間問題の争点がぼやけ、中央と沖縄に「ねじれ」が生じたことは、いわゆる浮動層の知事選への関心を低下させる懸念がある。
各陣営は他候補との違いを有権者にアピールし支持を訴えているが、現時点では、政策の違いが有権者に十分に浸透しているとは言い難い。
盛り上がりに欠ける現在の状況を打開するためには、一にも二にも運動量を増やすことである。運動を拡大し、政策をめぐる論戦を深めていくことによって有権者の関心を高めていくことが必要だ。
日米安保への評価、経済政策の手法、カジノ導入をめぐる姿勢、県立病院の独立行政法人化など、政策の違いは次第に明らかになりつつある。対立軸を鮮明にし、有権者に分かりやすく政策を示してもらいたい。
投票率を高めることが、政府に対する沖縄の交渉力を強くする。