2010年11月19日 12時18分 更新:11月19日 15時44分
同僚から性的暴力を受けたとして国を訴え、勝訴が確定した航空自衛隊の元女性自衛官(24)が、元航空幕僚長の田母神(たもがみ)俊雄氏の著作で名誉を傷つけられたとして、謝罪を求める通告書を17日付で田母神氏側に送った。女性の代理人が19日明らかにした。事件を「男女間の“いざこざ”の類(たぐ)い」と表現し、女性の入院歴など虚偽の記載をしているとしている。
女性は在任中に性的暴力を受けたうえ退職を強要されたとして国に損害賠償を求めて提訴し、札幌地裁が7月、事実関係を認めて国に580万円の支払いを命令。国側は控訴せず、判決が確定した。田母神氏は事件当時、空自トップの航空幕僚長だった。
問題になっているのは、田母神氏が昨年5月に出版した「自衛隊風雲録」(飛鳥新社)。女性側は「女性は精神的に不安定で、病院に2回ほど入院した」などの記述は事実に反するとしたうえで「職務上知りえた女性のプライバシーにかかわることを公刊物にしており、自衛隊法で定められた退職後の秘密保持義務に違反する」と訴えている。10日以内の回答を求め、謝罪がない場合は刑事告発などの法的手続きを取るという。
女性は「本を売る道具にされたのではないか。裁判が終わったのに、事実と異なる内容の本が残ってしまい憤っている」とコメントを発表した。田母神事務所は「担当者が不在で答えられない」としている。【久野華代】