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きょうの社説 2010年11月20日
◎看護師の勤務環境 経営参画の道も広げたい
 
 石川県は12月から、看護師の就労環境改善策として「多様な勤務形態」の導入を病院
管理者に促すセミナーを初めて開催する。結婚や育児など生活環境の変化に対応した多様な働き方を制度化することは、看護師の確保・定着に効果があり、各病院がそれぞれの実情に応じた柔軟な勤務形態を導入し、その改善を図っていくことが望ましい。看護師の勤務環境の改善でさらに考えたいのは、看護師の能力、経験を病院の経営に生 かす仕組みを整えることである。県内でも最近、看護師を副院長に登用する病院が出てきたが、看護師が看護現場の責任者にとどまらず、重要な医療スタッフとして病院経営にも参画できる道を広げることは、看護師の意識、意欲を高め、一層の地位向上につながろう。 出産、育児といったライフステージに応じた多様な勤務形態は、看護師の離職防止や潜 在看護師の職場復帰に効果的という認識が広がっている。日本看護協会の2007年調査では、病院の41%強が勤務形態の多様化に取り組んでいる。具体的には、短時間勤務や夜勤専従、パートタイマー、3交代と2交代の選択制などで、導入施設の70%は看護師の確保・定着に効果があると答えている。 石川県内の看護職の離職率は改善傾向にあり、全常勤職員で7・1%と全国平均(11 ・9%)より低いが、多様な勤務形態の導入は看護師募集に際しての病院のセールスポイントになっており、普及が求められている。 さらに、看護師の勤務環境に関して、看護師の視点を生かした病院改革の動きも強まっ ている。患者本位の医療やチーム医療を充実させるには、患者に身近に接し、スタッフの動きにも精通した看護師の経験、考え方をもっと病院経営に反映させるべきという認識が広がっているのである。 県内でも見られるようになった看護師の副院長起用は、それを象徴するものである。病 院の部署で最も大きい看護部がうまく動かなければ、医療の安全も病院経営も維持できないのであり、副院長を医師が独占する時代は終わったと認識する必要があろう。 
 
 
 
◎柳田法相発言 進退問われるのも当然
 
 政治を動かすはずの言葉が、どうしてこんなに軽いのか。国会は閣僚の相次ぐ失言で、
まさに政権末期を思わせるような暗たんたる状況である。柳田稔法相の国会答弁軽視発言では、自民党が週明けに問責決議案を提出し、野党多数の参院本会議で可決されるのが確実な情勢となった。法相発言が看過できないのは、「答弁は二つ覚えておけばいい」という国会軽視の意味 のみならず、実際にそんな言葉でしか説明できないのではないかと資質を疑わせる点である。参院予算委員会で、中国漁船衝突事件の船長処分に関し、自民党議員から指揮権発動の可能性を問われ、まったくかみ合わない答弁を繰り返したのもその一つである。 柳田法相は大阪地検特捜部の証拠改ざん隠ぺい事件や中国漁船衝突事件にもかかわる主 要閣僚である。失言はたとえ地元の会合であろうと、職責の自覚や責任がすっぽり抜け落ちていたと思われても仕方ない。法相は「真摯かつ誠実に対応する」と陳謝したが、今さらという感じである。一度失った言葉の信頼を取り戻すのは極めて難しいだろう。 衆参の多数が異なる「ねじれ国会」では、与党がよほど丁寧に国会運営を進めないと展 望は開けない。法相発言は、野党の追及は官僚のような決まり文句でかわせばよいという意味であり、野党が反発し、辞任を迫るのは当然である。国会を混乱させた責任は極めて重いと言わざるを得ない。 一方、仙谷由人官房長官が口にした「自衛隊は暴力装置」発言は、自衛隊に誇りを抱い ていれば出るはずのない表現であり、別の意味で深刻である。自民党の抗議で撤回したものの、自衛隊に対する本音が表れたとしたら、それこそ官房長官の適格性を疑われる。政権のタガをここで締め直さないと、制御不能に陥るばかりである。 野党は問責決議案を可決しても法相が続投すれば審議拒否を辞さない構えである。与党 が補正予算案の早期成立や国会審議を優先させるなら、辞任は不可避となろう。菅直人首相のリーダーシップが問われる重大な局面である。 
 
 
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