「ジーザス・キャンプ」 ©2006 A&E Television Networks. All Rights Reserved. |
今日は、「ジーザス・キャンプ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~」をご紹介します。
この映画は「福音派」「ファンダメンタリスト」と言われる、アメリカのキリスト教原理主義者について描かれたものです。
キリスト教福音宣教会のベッキー・フィッシャー女史が主催する、子供のサマーキャンプを追って、その実態を映し出しています。
最初に断っとかなければならないのは、「福音派がみんなこんな人だというわけではない」ということです。それを念頭においておかねばならないほど、身の凍りつくような情景が次々と出てきます。
冒頭、美しいアメリカの田舎の田園風景の中で、福音派のラジオが流れるのですが、それが常軌を逸しているのです。
「今、戦争が続いている」
「キリスト教徒とそれ以外の文化戦争だ」
「始めたのは私たちではないが──神の力で戦いに勝利し、宣言しよう」
「”アメリカをキリストの手に取り戻そう”と」
この映画は、そんな「宗教戦争」の話です。
フィッシャー女史は、子供の祈りの集会で「今こそ立ち上がり、汚れた世界を修正するのです」と叫びます。これは純粋に宗教的な意味合いではありません。その後にイスラム教徒の話が出てくるのです。あからさまに宗教戦争を煽っています。
「世界を変えるカギは私たちの手にある。子供たちが世界を変えるのです」
その後、子供たちの祈りが始まります。一心に祈る子供たちの姿が映し出されます。
「子供を利用すべきよ」
録画されたその映像を見ながら、フィッシャー女史は語ります。世界の約67億人の人口の3分の1が15歳未満の子どもである、そこに狙いを定めるべきと。
「敵は子供に力を注いでる」そう言って、パレスチナのキャンプの話を始めます。子供たちを兵士として訓練していると。そして、こう言います。
「キリスト教徒の子供たちも命をささげてほしい」
神秘体験を安易に使うのは危険ですが、神の教えについて説教するの構わないし、宗教教育自体が悪いわけではありません。教義を教えるために歌や踊りや人形を使うことは、何も悪いことではありません。
しかし、進化論を否定し、神の天地創造を教えるなどの、全てを宗教に染めあげる教育は明らかに間違っています。
とてつもなく恐ろしいのは、彼らが政教分離の原則を完全に無視しているという点です。
- 宗教を学校から切り離した政府を攻撃して、子供たちにハンマーで「GOVERNMENT」と書いたコップを割らせ、「この国に巣くう悪魔の力を打ち砕け」と教えること
- ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)の等身大の立て看板を見せて、挨拶させて、「神のもとに国を統一」と叫ばせること(共和党の人にも、このような集団から支持を受けていることを内心苦々しく思っている人も、少なからずいるでしょう)
- 子供たちに「アメリカで中絶が禁止されるよう声を上げろ」と言い、「神よ、中絶を禁止し、アメリカに信仰復活を」「正しい判事を」と叫ばせること(当時はアメリカの最高裁判事が選出される時期であり、福音派は保守派の判事を選ぶよう主張していた)
これらの異常な宗教教育のシーンの合間に、子供たちの姿が映し出されるのですが、信仰心の強い親のもとに育って、全てを宗教に染めあげる教育を受けていること以外は、どこにでもいそうな普通の子供たちなんですね。それがとても痛々しいんです。
どのような思想信条、宗教を信じようが自由ですが、子供を政治的に利用しようとする者に、ろくな奴はいないと断言できます。
最後にラジオのDJとの対話で、フィッシャー女史は自らの本音を吐くのですが、これは見てのお楽しみと言っておきましょう(大体予測できるでしょうが)。
ある意味、下手なホラー映画よりもはるかに怖い映画です。
是非見てください。
4 コメント:
>キリスト教福音宣教会のフィッシャー女史
キリスト教福音宣教会でググると・・・。
なんでこういう集会やると子供たちも泣いたり異言を発したりするんだろう。
集団ヒステリーみたいなものかい。
>彼らが政教分離の法則を完全に無視…
法則ではなく「原則」でしょ?
2010年11月19日22:14の匿名さん>
ご指摘有難うございます。修正しました。
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