静岡県清水市(現静岡市清水区)で1966年6月、一家4人が殺害された「袴田事件」で、袴田巌死刑囚(74)の弁護団が検察側の証拠を検証した結果、犯行時に着ていたとされる衣類は「(捜査上の)捏造(ねつぞう)」との主張を補強する材料を、新たに見つけた。これを受け弁護団は第2次再審を求める補充書を作成、静岡地裁に提出する方針を決めた。
県警は67年8月31日、血のついたズボンなど衣類5点を袴田死刑囚が勤めていた会社のみそタンクから発見。翌月12日、このズボンと同じ生地の共布(補修布)が旧静岡県浜北市(現浜松市浜北区)の袴田死刑囚の実家から見つかり、事件への関与を裏付ける証拠として採用された。
検察側が今年9月に一部開示した証拠を弁護団が検証したところ、実家から共布が見つかる8日前、捜査員がズボンの製造元から同じ生地のサンプルを入手していたことが判明。共布を発見した6日後にも、県警が製造元から再び同じ布の提供を受けていたことも分かったという。
弁護団は「同じ布を2度入手するのは不自然だ」と指摘。補充書では、製造元から最初に入手した布サンプルを「実家から見つかった」と偽装した可能性があると主張する。
弁護団は既に二つの布サンプルの開示を地裁に文書で求めており、「検察側が示せないなら捏造の根拠になる」と訴えている。
さらに、開示証拠にあったカラー写真では、みそに1年2カ月つかっていたとされる衣類に鮮やかな赤い血痕が写っていた。弁護団は「みそに長期間つかっていれば褐色になるはずだ」として、補充書では併せて捏造を裏付ける根拠になると指摘する。
補充書は地裁、地検側との次回(12月6日)三者協議の前に提出する予定。【竹地広憲】
毎日新聞 2010年11月17日 15時02分(最終更新 11月17日 19時46分)