第2の天安門間近? 胡錦濤の深い悩み

尖閣どころではない国家主席~中国株式会社の研究~その85

2010.11.19(Fri)  宮家 邦彦

中国

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 11月10日には人民銀行が預金準備率を0.5ポイント引き上げた。2009年後半には前年同月比で30%近い伸びを示していたマネーサプライ(M2)も、本年10月には19.3%増にまで下げてきた。

 胡錦濤総書記といえども、過剰流動性=インフレ=社会的不安定という政治の方程式には敏感にならざるを得ないのだ。

既得権益との戦いに敗れた?

中国の次期指導者、習近平氏の横顔

権力は手にするがお気の毒な習近平副主席〔AFPBB News

 こう見てくると、胡錦濤政権は我々の想像以上に弱体化しているように思える。確かに尖閣問題では「自己主張を強める」、「自信満々」の中国が見え隠れした。

 しかし、弱い犬ほどよく吠える。胡錦濤政権の実態はむしろ「綱渡り」の「弱々しい」ものではないのか。今回のAPECで胡錦濤総書記の表情が暗く見えたのも、ひょっとしたらこれが原因なのかもしれない。

 振り返ってみれば、江沢民時代の高度経済成長により、「権力を現金化」する既得権益は共産党の隅々まで拡大・肥大化していった。

 胡錦濤とその共青団の仲間たちは、2002年からこうした弊害を是正すべく改革を始めたはずなのに、今やその既得権益に飲み込まれようとしている。

 多くの開明的改革は、党中央に蔓延(はびこ)る腐敗した権力者と地方に土着するそのクローンたちの強い抵抗により、事実上骨抜きにされてきた。

 就任後鳴り物入りで宣伝された胡錦濤総書記の「和諧社会論」や「科学的発展観」を語る党員も今やほとんどいなくなった。

 そうだとすれば、胡錦濤総書記の真の敵は、軍部、上海閥、党内左派だけでなく、目前の既得権を死守しようとする共産党という「利権集団」全体なのかもしれない。

 こんな中国共産党を引き継ぐ習近平を、同じ1953年生まれの筆者はちっとも羨ましいとは思わない。ご苦労様です。

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