習近平は必ずしも胡錦濤の政敵ではない。むしろ、一部報道によれば両者の関係は良好であり、今回習近平の中央軍事委員会副主席就任は「見送られる」との観測すらあったほどだ。
それが一転「副主席就任」に変わったのだとしたら、何か別の力が働いたと考えてよいだろう。
習近平の副主席就任は、胡錦濤の予想以上に、党内「反胡錦濤・温家宝勢力」の反発が強かったことを意味しているのかもしれない。
胡錦濤個人に対するものというより、胡錦濤政権が進める一連の「国際協調路線」に対する批判が国内で広く高まっていると見るべきではなかろうか。
人民元問題
そこで考えられるのが「人民元切り上げ」問題を巡る米国との軋轢である。
マクロ経済学的に見れば、これだけ対外貿易黒字が増える一方、国内ではインフレ懸念を抱えているのだから、人民元の切り上げは当然中国政府にとって有効な政策オプションの1つであるはずだ。
しかし、人民元の急激かつ大幅な切り上げは南部を中心とする輸出依存型製造業を直撃する。胡錦濤政権が、今も脆弱な中国製造業が産業構造転換を図る前に、米国の圧力に屈して人民元切り上げに応ずれば、輸出産業を基盤とする党内反対勢力は決して黙っていないだろう。
米国は本年に入り、人民元問題の解決を対中政策の主要懸案と位置づけ、中国政府に対する圧力を高めつつある。
今回のG20が、「通貨安競争の回避」と世界経済不均衡の是正に向けた経常収支に関する「数値目標の導入」を巡る「米中間の戦場」と化したことは記憶に新しい。
人民元以外にも、米中間には様々な懸案がある。国際社会の中国を見る目もますます厳しさを増している。
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