2010年11月19日15時27分
舞台に初挑戦する。それも「ジャンヌ・ダルク」(白井晃・演出、中島かずき・脚本)のタイトルロールという大役だ。
「枠に収まるにはまだ早い。何か新しいことにトライしてみたかった。失敗してもいいから、いろいろなことを経験することが必要だと思った」
既に立ちげいこに入り、十分に手応えを感じている。
「映像はシーンや位置が決められ、美術がそろった中での演技になるが、舞台げいこは自由にできることが多い。自分で想像して動けるのが楽しい。いくつものジャンヌ像が出てきて、あれもしてみたい、これもしてみたいと試行しています」
ジャンヌ・ダルクはフランスの国民的英雄。百年戦争で仏軍を率い、侵攻していた英軍からオルレアンを解放、シャルル7世を戴冠(たいかん)へと導いた。
「ジャンヌは純粋な強い意志で自分の使命をまっとうした女性。神の声が聞こえるなど、精神が尋常でないところがある。その気持ちの流れがわかっていないと動きが出てこない。誰もが知っている人物だからこそ、期待に応えないといけないので、一生懸命です」
飛ぶ鳥も落とす勢いだったジャンヌだが、途中から神の声が聞こえなくなり、異端として宗教裁判にかけられ、火刑に処される。享年19だった。
「なぜそんな若い子が国を動かせたのか疑問だったが、おそらく落ち着いた大人ではなしえず、エネルギッシュな年齢なので勢いで出来たことだと思う」
戦闘シーンでは剣を振り回す。金属がぶつかる音に「殺し合うってこういうことなのかと、ぞっとするくらいリアルに感じる」という。
自分の役作りは悩んでいる最中だが、客としては舞台が見えてきた。「本当に面白い舞台になるとワクワクしている。幕が開くと同時に、とても遠い世界の15世紀のフランスにすっと入っていける気がする」
ドラマや映画でも引っ張りだこで多忙な日々を送る。
以前は遠出もしたが、今は一作一作に集中した後の疲労感が大きく、「趣味を楽しむ余裕がない。オフに入っても次の仕事に気が向いてしまう。仕事がないと何していいかわからない」。
先月22歳になったばかりだが、実に落ち着いた受け答えぶり。内に秘めた芯の強さが感じられた。(文・小山内伸 写真・鈴木好之)
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ほりきた・まき 1988年、東京都出身。ドラマ「野ブタ。をプロデュース」「篤姫」、映画「ALWAYS三丁目の夕日」など。「ジャンヌ・ダルク」は30日〜12月19日、東京・赤坂ACTシアター。電話0570・064・708(キョードー東京)。