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2型糖尿病:血糖値、骨髄と胸腺移植で正常に 関西医科大、マウスで成功

 肥満など生活習慣の乱れで発症する「2型糖尿病」を、骨髄と胸腺の同時移植で治療する動物実験に関西医科大の池原進教授、李銘講師(幹細胞異常症学)らが成功した。国内の糖尿病患者の95%を占める2型糖尿病の発症の仕組みの解明や、新しい治療法開発につながる可能性がある。14日にイスラエルでのシンポジウムで発表し、近く米医学誌「ジャーナル・オブ・オートイミュニティ」に論文が掲載される。

 血糖値を下げるインスリンは膵臓(すいぞう)のβ細胞で作られる。免疫を担うリンパ球の一種、T細胞が、β細胞を異物と誤認して破壊し、インスリンが枯渇するのが「自己免疫疾患」の1型糖尿病だ。一方、「生活習慣病」の2型は老化や肥満でインスリンの分泌や機能が落ちるのが原因とされるが、近年、2型も免疫系の異常でインスリンの機能が妨げられることが原因との説が出ている。

 池原教授は85年、1型糖尿病マウスに骨髄移植をし発症を抑えることに成功。今回、2型で実験を試みた。2型マウスに骨髄移植をしただけでは効果はなかったが、骨髄と胸腺を同時に移植すると10匹のマウスすべての血糖値が正常値に戻った。また細胞の表面でインスリンを受け取る受容体に起きていた異常も正常化した。

 骨髄内の造血幹細胞は胸腺に移動後、T細胞に分化し、自己細胞を正確に認識するよう「教育」を受ける。池原教授らは、骨髄と胸腺の機能が両方正常でないと、この教育プロセスに不具合が起き、2型を発症する可能性があると指摘、同時移植で治療効果が出たと見る。「2型糖尿病も自己免疫疾患の側面がある証拠を示せたと思う。より詳しい仕組みの解明が必要だが、治療法への応用に向け、研究を進めたい」と話している。【奥野敦史】

毎日新聞 2010年9月13日 東京夕刊

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