ここから本文です

観測史上最も若いブラックホールを発見

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 11月17日(水)15時59分配信

 誕生後わずか30年と推定される観測史上最も若いブラックホールが、地球からわずか5000万光年の場所で発見されたことが11月14日に発表された。これにより、ブラックホールの成長の初期段階を観測することが初めて可能となる。

 ブラックホールのほとんどは、大質量星が超新星爆発を起こした後に生まれると考えられている。超新星爆発の後に残った超高密度の核は、小さいが質量が非常に大きい中性子星となるか、または崩壊してブラックホールとなる。新たな超新星爆発は毎週のように宇宙のどこかで発見されているが、生まれたばかりのブラックホールの観測は一筋縄ではいかない。

 ブラックホールはその性質上あまりにも密度が高いため、光さえもその重力から逃れることはできない。ブラックホールを観測するためには、重力に引き寄せられて周囲に円盤状に集積した物質を見つけるしかない。今回発見された誕生直後のブラックホールもこうして物質が集積する過程にあると考えられる。

 研究の共著者でハーバード・スミソニアン天体物理学センターのエイブラハム・ローブ氏は声明の中で、「ブラックホールの一般的な形成過程が観測されたのはこれが初めてかもしれない。しかし、この種のブラックホールの誕生を検知することは非常に難しい。X線観測を何十年も続ける必要があるからだ」と述べている。

 このブラックホールを生んだ超新星爆発は、1979年にアマチュア天文家によって初めて観測された。その後、NASAのチャンドラX線観測衛星など地球を周回する各国のX線観測衛星が、渦巻銀河M100で起きた超新星爆発によって放射されるX線をとらえた。

 各観測衛星は、1995年から2007年にかけてこの超新星爆発の残骸の観測を続けた。その結果、X線を放射し続ける明るい部分が見つかった。これは、物質がブラックホールに吸い込まれる際に凝縮して高温になっていることを示す。

 ブラックホールに吸い込まれている物質は、かつて恒星が爆発したときに放出された残骸か、近くの伴星から重力で引き寄せられたガスのいずれかである可能性が高いと考えられている。しかし、いずれにしろ、ブラックホールが誕生当初にどれだけの量の物質を飲み込むかについて理解が進むとの期待が高まっている。今のところ、この“赤ちゃん”ブラックホールの“食欲”はすさまじいようだ。

 ノースカロライナ州にあるイーロン大学の物理学教授でスミソニアン天体物理観測所の研究員ダン・エバンス氏は研究に参加していないが、次のように話している。「このブラックホールに限っていえば、1年間に惑星1つ分以上の質量という驚異的な量の物質を吸いこんでおり、それがそのままブラックホールの成長につながっている。今回初めて、このような誕生直後のブラックホールが吸い込む物質の量を詳細に記録することができる」。

Andrew Fazekas for National Geographic News

【関連記事】
ブラックホールから吹き出す高温ガス (写真集:ブラックホール)
ブラックホールは“別の宇宙”への扉?
最遠のブラックホールとその伴星
ブラックホール生成過程に新たな謎
史上最も詳しいブラックホールの姿

最終更新:11月17日(水)16時29分

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

 

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイトの前後の記事

 

PR

carview愛車無料査定
PR

Yahoo!ニュースからのお知らせ(11月17日)

注目の情報


PR