●建設費100億円起債で
北九州市がサッカーJリーグ2部(J2)ギラヴァンツ北九州の本拠地となる新スタジアムをJR小倉駅北口(小倉北区)に建設すると発表した15日、会見した北橋健治市長は「アクセスが抜群に良く、街の活性化につながる」と、交通の利便性や、小倉都心の商業施設などとの連携を重視したことを明らかにした。建設費は100億円強を見込むが、市は起債を活用する方針だ。
市はこの日、当初は門司区や八幡西区も含め9カ所の候補があったが、(1)小倉駅北口(2)スペースワールド園内(八幡東区東田)(3)JR八幡駅北口(同)-の3カ所に絞り込んで検討していたことを明かした。
最終的には(1)土地を所有する住友金属工業(大阪市)から借地でき、費用を抑えられる(2)市内外からのアクセスが極めて良い(3)小倉都心部のにぎわい作りにつながる(4)九州新幹線鹿児島ルート全線開通に合わせ集客が図れる-などの理由で、小倉駅北口に決まったという。八幡駅北口は、土地所有者が売却を求めたため候補から外れ、スペースワールドは運営企業との交渉が進まなかった。
新スタジアムは、J1昇格の条件の1万5千人を上回る約2万人を収容。グラウンドは天然芝で、サッカーやラグビーなど球技専用とする。太陽光発電や雨水の再利用、LED照明などを導入した「エコスタジアム」とし、一部は海上に突き出す設計になる。
一方、景気低迷で市の税収が落ち込む中、スタジアム建設は財政悪化を招くとの指摘もある。この点について北橋市長は「市民が心を一つにしてプロチームを応援し、結束することは大事だ。財政状況は予断を許さないが、工夫しながら管理運営していきたい」と強調。成績が低迷するギラヴァンツの観客数についても「魅力のあるエコスタジアムを造れば入場者数は増える」と述べた。
●「北口に人の流れ」 「税金投入に疑問」 市民や球団関係者 歓迎や反発の声
ギラヴァンツ北九州の本拠地となる新スタジアム計画に、球団関係者や市民はさまざまな反応を示した。新本拠地に期待が高まる一方、チームが最下位に低迷する中、北九州市が100億円を超す税金を費やすことに疑問の声も上がった。
ギラヴァンツ北九州の横手敏夫社長(65)は「大変うれしく、ありがたい。小倉駅は新幹線の停車駅であり、アウェーのサポーターも集めやすくなる」と市の決定を歓迎。一方で、「完成までの5年間のうちにJ2で戦えるチームづくりをしなければならない。厳しい経済情勢の中、身の引き締まる思い」と述べた。
小倉駅北口(小倉北区)の建設予定地周辺で飲食店を営む遠矢弘毅さん(43)は「北口は南口に比べて寂しかった。サッカーに限らずいろいろな使い方をして、自然に人の流れができてくれば」と期待。AIMビル内で雑貨店を経営する大原カスミさん(54)は「北口がにぎやかになればうれしい」と話した。
ギラヴァンツはJリーグ参入1年目の今季、3試合を残し1勝12分け20敗(勝ち点15)で最下位。ホームゲームの1試合平均入場者数は4094人と苦戦している。小倉南区の会社員武藤義明さん(43)は「日々の生活に苦労している人もいる中、多額の税金を投入するのは疑問に感じる」と指摘。サポーター団体「イエローブリゲード」の長谷川務代表(41)は「今のチーム状態では税金投入にかなりの反発があると思う。新スタジアムにふさわしいクラブになるには課題が山積みだ」と話した。
=2010/11/18付 西日本新聞朝刊=