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【群馬】

少女の死が問うもの 桐生小6自殺<下> 残された家族の苦悩

2010年11月17日

上村明子さんの遺影の前で新里東小の児童の文集を読む父親の竜二さん=桐生市で

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 上村明子さん(12)が亡くなった後、家族のもとには新里東小から同級生や下級生らが書いた文集が届けられた。明子さんの冥福を祈り、運動会などの楽しい思い出を振り返る内容が多いが、いじめがあったことを示唆する文章はない。

 自殺から二十五日。竜二さんたち家族は現在、いじめと自殺の関連を含めた桐生市教委の再調査の行方を見守っている。文集を前にしながら明子さんの母親(41)は「明子から聞く学校での生活は、いつもさびしそうだった。学校での様子をもっと知りたい。待っているのはつらい」と話す。父親の竜二さん(51)は「なぜこれほどまでに時間がかかるのだろう」とこぼす。

 竜二さんたちの苦悩は、いじめや学校での事件事故などで子どもを亡くした遺族の多くが経験している。いじめ防止などに取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市、小森新一郎代表)によると、いじめを受けた子どもが自殺したケースでは、遺族が学校や教育委員会に訴えても、大半がいじめを認めないか、認めても自殺との因果関係は分からないという結論が出ている。

 学校側の調査結果も「個人情報なので」といった理由で大部分が明らかにされないケースが目立つ。同NPO法人がことし二〜九月に実施したアンケートによると、過去にいじめや教師の体罰などで子どもを亡くしたり、子どもが後遺症を抱えるなどの計五十一家族のうち、約八割の四十一家族が、学校や教育委員会から自発的な事件・事故の詳しい説明を受けなかったと回答している。同NPO法人理事の小森美登里さん(53)は「学校と親の情報共有が進まなければ、有効な再発防止策はたてられない」と指摘する。

 小森さんは、一九九八年にいじめを受けた高校一年の長女が自殺。いじめの存在や自殺との因果関係などを認めるよう求め、神奈川県などを訴えて七年かけて裁判を争った。

 裁判が長引くにつれ、学校関係者や周囲の保護者らから「ああいう親だから子どもも自殺したんだ」などと家庭に責任を負わせる声が上がり、胸を痛めた。多くの遺族がこうした「いじめの二次被害」に傷を深める経験をするという。

 裁判で、いじめは認められたが、自殺との因果関係は認められなかった。「遺族にとってはいじめを認めていないのと同じ。いじめがなければ今も子どもは生きているという確信があるんです」

 竜二さんは「うちは裕福でなく、(経済的には)『いい親』じゃなかったかもしれない」と話す。転校を切望した明子さんに、小学校卒業後に大阪に引っ越す計画を伝えていたことにも「あと少しのがまんと思っていた。今振り返ると、学校に行かせなくても良かった」と悔いがある。

 「けれど」と明子さんの遺影を見ながら強調する。「子どもを追い詰めることはしてこなかった。私たちには(いじめが原因で自殺したという)答えが見えているんです」

 

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