郵便不正事件:大阪地検の主任検事逮捕 証拠隠滅容疑

2010年9月21日 21時25分 更新:9月22日 0時32分

前田恒彦容疑者=大阪市北区で2010年9月10日、三村政司撮影
前田恒彦容疑者=大阪市北区で2010年9月10日、三村政司撮影
郵便不正事件で改ざんされたFDのデータ=大阪市北区で2010年9月21日、宮間俊樹撮影
郵便不正事件で改ざんされたFDのデータ=大阪市北区で2010年9月21日、宮間俊樹撮影

 厚生労働省の村木厚子元局長(54)に無罪が言い渡された郵便不正事件で、証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんした疑いが強まったとして、最高検は21日夜、大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)を証拠隠滅の疑いで逮捕した。証拠品のデータ書き換えは、現職特捜検事の逮捕という極めて異例の事態に発展した。また、大阪地検は同日、控訴を断念し、上訴権を放棄したと発表した。元局長の無罪が確定した。

 ◇村木元局長の無罪確定

 前田検事の逮捕容疑は、09年7月中旬ごろ、パソコンを使用してFD内に記録された偽証明書のデータの最終更新日時を「04年6月1日1時20分6秒」から「6月8日21時10分56秒」に改変し、他人の刑事事件の証拠を変造したとしている。

 最高検は21日、今回の事件の捜査が適正に行われたかを調査する検証チームを発足させた。年内に調査結果を公表する方針。また法務省は、当時の大阪地検幹部らを処分すべきか検討する。

 前田検事は20日までの大阪地検の調べに「誤ってデータを書き換えた」と説明し、意図的な改ざんではないと主張したとされる。最高検は21日に大阪高検や地検から報告を受けて対応を協議し、捜査を開始することを確認。前田検事を取り調べた結果、強制捜査が不可欠と判断した。

 最高検刑事部の検事を主任に、東京高検、東京地検の検事も含めて検事7人の捜査態勢を整え、同日夜には大阪府枚方市の前田検事の自宅や大阪地検庁舎内の前田検事の部屋を捜索した。今後、前田検事の動機を詳しく調べるとともに、当時の上司や同僚らからも事情を聴き、組織的な関与の有無を解明する。

 問題のFDには、厚労省元係長、上村勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=が作成した偽証明書のデータが保存されていた。09年5月の押収時点では、更新日時は04年6月1日だったが、弁護側に返却された後で調べたところ、6月8日に書き換えられていた。

 検察側は公判で、村木元局長が04年6月上旬ごろ、偽証明書の作成を部下だった上村被告に指示したと主張した経緯があり、前田検事が検察側の構図に合うようにFDのデータを改ざんした疑いが持たれている。

 刑法104条(証拠隠滅等)は、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅、偽造、変造する行為について、2年以下の懲役または20万円以下の罰金を科すと定めている。

 ◇「涙がこぼれた」村木元局長

 検察の控訴断念を受け、村木厚子元局長は「さすがに、この1年3カ月あまりのことを思い、涙がこぼれました。前田検事の逮捕の件は報道で知りました。証拠の改ざんのみでなく、本件全体を通じての問題点をきちんと検証してくださることを期待しています」とのコメントを出した。

 ◇最高検、村木元局長に謝罪

 21日午後9時過ぎから会見した最高検の伊藤鉄男・次長検事は「重大、深刻に受け止めている。早急厳正に対処する」と話した。そのうえで、無罪判決について「基本に忠実な捜査が不徹底だったと言わざるを得ず、村木元局長にご負担をかけたことを誠に申し訳なく思っています」と元局長に謝罪した。

 ◇「深くおわび」大阪地検

 前田容疑者の逮捕を受け、大阪地検の大島忠郁(ただふみ)次席検事は、21日夜の会見で「捜査に全面的に協力する所存です。誠に申し訳ありませんでした」と謝罪した。

top
文字サイズ変更
この記事を印刷

PR情報

アーカイブ一覧

 
共同購入型クーポンサイト「毎ポン」

おすすめ情報

注目ブランド