郵便不正事件:「非常におそろしい」弁護側が徹底解明要求

2010年9月21日 12時34分 更新:9月21日 13時42分

険しい表情で大阪地検によるFDデータ改ざんについて話をする村木厚子厚労省元局長(左)=司法記者クラブで2010年9月21日午後0時9分、梅村直承撮影
険しい表情で大阪地検によるFDデータ改ざんについて話をする村木厚子厚労省元局長(左)=司法記者クラブで2010年9月21日午後0時9分、梅村直承撮影
会見で見解を述べる弘中惇一郎弁護士=東京・霞が関の司法記者クラブで2010年9月21日午前8時47分、尾籠章裕撮影
会見で見解を述べる弘中惇一郎弁護士=東京・霞が関の司法記者クラブで2010年9月21日午前8時47分、尾籠章裕撮影

 「非常におそろしい」。障害者団体向け郵便料金割引制度を巡る郵便不正事件で、捜査を担当した大阪地検特捜部の前田恒彦主任検事(43)が、証拠として押収したフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたことが判明した。「こんなことまで起こるのか」。大阪地裁判決(10日)で無罪を言い渡された厚生労働省の村木厚子元局長(54)は21日、東京都内で会見を開き、検察当局に徹底解明を求めた。

 21日正午まえ、村木元局長は白の柄入りスーツ姿で会見場に姿を見せた。冒頭で改ざん疑惑の感想を問われると、「大変びっくりしているし、何があったか実態を解明してほしい」と淡々とした口調で訴えた。

 大阪地検特捜部は、厚労省元係長、上村勉被告(41)が04年6月上旬に村木元局長から証明書の偽造を指示され、その後、偽の証明書を作成したという構図を描いていた。検察側は公判前整理手続きでも一貫して村木元局長から上村被告への指示は6月上旬と主張したが、開示された捜査報告書によるとFDの最終更新日時は6月1日になっていた。

 主任弁護人の弘中惇一郎弁護士によると、最初にこの矛盾に気づいたのは村木元局長本人だった。拘置中だった昨年秋ごろ、接見した弁護人に「6月1日未明と、6月上旬というのは整合性がない。重要なことではないでしょうか」と訴えた。

 弁護側は検察側に「6月上旬というあいまいな日時でなく、具体的にするように」と釈明を求めたが、検察側は応じなかったという。村木元局長は矛盾に気づいたことで「『これで真相解明できる』と思って、かなり期待を持っていた」と振り返った。

 元局長は「本当に異常なことなので、一部に変な人がいたんだという話にしないでほしい。検察に対する信頼がかかっている問題なので、何があって、なぜこういう形になったのか、きちんと検証してほしい」と捜査に乗り出した最高検に注文。「こういうことが起こると、何を頼りにしていいのか分からなくなる。(再発防止策を)きちんと考えてほしい」とも語った。

 村木元局長に先立ち会見した弁護団は、主任検事を証拠変造容疑などで刑事告発するかどうかを検討することを明らかにした。

 弘中弁護士は「(実際の日時が記載されている)捜査報告書の証拠申請もなかった。FDの申請もなく疑問に思っていた」といい、「これまで警察レベルではあったが、検察の、しかも主任検事が押収した証拠を改ざんしたという話は聞いたことがない。検察、捜査自体の根幹を揺るがす事態で前代未聞だ。調査究明し、しかるべき措置をとってほしい」と不信感をあらわにした。【鈴木一生、山本将克、野口由紀】

 ◇「大阪特捜のエース」 前田主任検事

 改ざんしたとされる前田恒彦・主任検事(43)は「大阪特捜のエース」と呼ばれていた。東京地検特捜部時代には福島県知事汚職事件(06年)や防衛事務次官による防衛汚職事件(07年)の捜査を担当。大阪地検特捜部に戻った後、音楽プロデューサー、小室哲哉氏の5億円詐欺事件(08年)などを手がけた。

 今年1月からは民主党の小沢一郎元幹事長の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件の応援に入り、元公設第1秘書の大久保隆規被告の取り調べなどを担当した。

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