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[24376] ストライクウィッチーズ 極北に舞う鋼鉄の魔女
Name: asr◆2d538276 ID:96acca72
Date: 2010/11/17 20:33
 角川書店より発刊されております「ストライクウィッチーズ キミとつながる空」の第4話、「スオムスから聴こえる歌声」をもとにしたSSです。
 同作の後日談という想定で書いています。

 長さは原稿用紙換算で60枚程度、全4章で構成される短編となります予定です。
 よろしくお願いいたします。



[24376] ストライクウィッチーズ 極北に舞う鋼鉄の魔女1
Name: asr◆2d538276 ID:96acca72
Date: 2010/11/17 20:40


 ニッカ・エドワーディン・カタヤイネンは知っている。
 "彼女"が何物にも縛られないということを。

 雲のように風のように、なににも束縛されず、なにをも縛ることなく。
 流れる水のように自然で、すべてをあるがままに受け入れている。
 まるで天衣無縫をかたちにしたかのごとき、超然とした在り方。
 あきれるくらいに気安くて、でも恐くなるほどに悠遠で。
 彼女の心を掴むことなど、何人にもできはしない。
 そのことをニパは、ほかの誰よりも知っている──



 ◇



 ──大気を裂いて、空を往く。

 頭上には蒼穹。眼下には雲海。
 左方には沈みゆく太陽。東へ目を向ければ、気の早い星たちが瞬きを始めている。
 高度8,000m、気温マイナス40度。気圧は地上の1/3ほどしかなく、その分だけ酸素も薄い。
 こんな過酷な環境が、彼女たちのためにしつらえられた舞台である。

 はるかな昔、魔女と呼ばれた者たちは、箒を使って空を縦横に駆けたという。
 現代、1945年の魔女たちは、ストライカーユニットと呼称される機械を駆使して空を飛ぶ。
 魔導エンジンの力を借りて、低気温や薄弱な酸素をものともせず、その意のままに大気を支配する彼女たちを、人々は尊敬を込めてこう呼んだ。

 いわく、"ウィッチ"と。



「確認するぞ。今回の敵は、オラーシャ方面から流れてきた中型のネウロイ。数は1機」
「楽勝だな」
「油断するなよイッル。オラーシャの観測所からの情報によると、結構足が速いらしい。捨て置くと面倒になるかもしれないから、できればそちらで叩いてくれとさ」
「なんだよ、あっちで討ち漏らしたくせに他人事みたいだなあ」
「そう言うなって。こういうときはお互いさまだろ」
「そうよエイラ。わがまま聞いてもらっているんだし、わたしたちもがんばらないと」

 夕暮れの色に染まった空を、3つの影が飛んでいく。

 先頭を行くのはスオムス空軍所属のウィッチ、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン曹長。
 その左後方に、同じくスオムス空軍のエイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉。
 その右側、カタヤイネン曹長から見て右後方を飛ぶのが、オラーシャ陸軍所属のサーニャ・V・リトヴャク中尉だ。

 3つの影はトライアングルのように整然とした陣形を維持しつつ、ネウロイとの会敵予想地点を目指して進軍していた。

「話を続けるぞ。敵は地点G-3からまっすぐ西を目指しているらしい。ヨロイネン観測所から少し北を通過していくかたちになる」
「その進路の先だと……目的はカウハバ基地か?」
「断定はできないけど、そういうことになるかな。507がほとんど出払ってる今を狙ってきたのか、それともただの偶然なのか……それはわからない。でも、黙って見てもいられないから、わたしたちにお鉢がまわってきたってわけだよ」
「ハンナが残ってくれてたらなあ。そしたらわたしたちも楽ができたのに」
「こぉら、イッル。一応おまえがスオムスのトップエースなんだからな。何でもかんでもハンナに押しつけるなんて、よくないぞ」
「はいはい、わかってますって。ていうか何だよ、一応って」

 くすくすと、ささやくような笑声がインカムを通して広がる。
 ニパとエイラが同時に視線を向けた先には、楽しそうに微笑むサーニャの姿があった。

「ふたりとも、仲良しなんですね」

 ニパとエイラが、これまた同時に顔をしかめた。

「べつに、仲良くなんてないぞ」
「そうだよサーニャさん。こういうのは腐れ縁っていうんだ。イッルときたら、昔からいたずらばかりで困ったものだよ。ことあるごとにわたしを引っかけようとして……」
「ばっ、ニパ! サーニャになにばらそうとしてるんだ!」
「何だよ、本当のことじゃないか」
「仲良しなのはいいですけれど、そろそろ会敵地点ですよ」

 微笑むサーニャが指差した先には、雲海の上に広がる大空がある。

「っと、無駄話はおしまいだ。イッル、見えるか?」
「い~や、何にも。サーニャはどうだ?」

 エイラの声に応えるようにして、サーニャの頭の両側に、薄緑に光る魔導針が展開される。
 この固有魔法を使うことにより、サーニャは目視では及ばぬ広範囲を索敵できるのだ。

「ここから東北東、距離20,000、速度は約700。まっすぐ西へ向かってる」
「700かー。思ったより速いなあ」
「頼んだぞ、イッル」
「って、わたしが行くのかよ!」
「仕方ないだろ。そんな速度に追いつけるのは、おまえのストライカーくらいなんだから」
「ちぇっ、しょうがないなあ……」

 ぼやきながらもエイラが先頭に立ち、後ろに並んだニパとサーニャを置いて、ぐんぐん加速していく。

「あとはさっきの打ち合わせ通りに。さあ、戦闘開始といこうか」
「「了解」」

 凛としたニパの宣言に、エイラとサーニャが応えた。



[24376] ストライクウィッチーズ 極北に舞う鋼鉄の魔女2
Name: asr◆2d538276 ID:96acca72
Date: 2010/11/18 19:18



 進路を西へ変えたニパたちに、追いすがるようにしてネウロイが迫ってくる。
 黒一色の胴体を、ハニカム構造の赤いタイルが彩った禍々しい威容。
 分厚くたれ込めた乱層雲の直上を、差し込む西日さえその漆黒に飲み込みながら、意思なき機械のように飛び続けている。

 相対距離は1,000を切り、向こうもこちらに気がついているはず。
 ニパがそう思うのとほぼ同時に、赤い閃光が大気を切り裂いた。
 赤いタイルから放たれる、幾条もの光線。それが進路をふさぐ邪魔者を取り除かんと、必殺の刃となってニパたちに襲い掛かる。
 ウィッチといえども、まともに喰らえば無事ではいられない。そんな一撃を、しかしニパたちは軽やかにさばいていく。
 ニパとサーニャは防御シールドを展開し、放たれる光線を着実に防御する。
 エイラは間断なく襲い来る光線を、すべて回避機動のみでやり過ごしている。
 そうしているうちに速度の落ちたウィッチたちの囲いを突き抜け、ネウロイはさらに進軍していく。

「どうやらわたしたちとやり合うつもりはないらしいな!」
「エイラっ!」
「わかってる! このぉっ!」

 逃げゆくネウロイを、エイラが追う。
 相対距離が段々と短くなっていき、300、200、そして100。つかず離れず、この距離を維持している。
 後ろにつかれるのを嫌がってか、ネウロイが右へ左へと舵を切り、エイラを振りほどこうとする。
 だがエイラは、そんな機動にも惑わされることなく、常に一定の距離を保ち続けている。その様子はまるで、獲物に食らいついた肉食獣のようだった。

 ネウロイが光線を放つ。10に及ぶそれが追跡者を射殺さんと迫りゆき、そしてエイラはそのことごとくを回避した。
 絶え間なく撃ち放たれる赤光を、紙一重ですべて避け続ける。
 だというのにその表情にはかけらほども焦りがない。気負いもない。いつもと変わらず、自然体のままだった。

 一歩間違えば死ぬかもしれない。そんな状況を、エイラはまったく恐れていない。
 いや、そんなことには決してならないと、彼女は"知っている"のだ。
 それこそがエイラの固有魔法、未来予知の力である。
 ごく近い未来を予知することで、あらゆる攻撃を回避する──それは空戦において、絶対的と言えるほどの力だった。
 しかし、ニパは知っていた。エイラの機動が、その能力だけによるものではないことを。

 ニパは、これまでに多くのエースを見てきた。
 ここスオムスは、1939年に起こったネウロイの侵攻に対し、名将マンネルハイム元帥の指揮のもと、果敢に立ち向かった。数十倍とも言われる絶望的な戦力差に辛酸を舐めさせられる局面は数多かったものの、最終的には趨勢を決し、国土の大半を守り抜くことに成功している。

 その戦果には、列強各国からの支援が大きく貢献している一方で、別の要因もまたあった。
 スオムスの兵が精強だったことである。
 だからニパは、これまでに多くのエースと接する機会があった。
 かくいう彼女自身も、エースと呼ばれるウィッチのひとりだ。

 しかし。

 これほど現実離れした存在は、今視線の先を飛んでいるウィッチのほかに見たことがなかった。

 空を飛ぶうえで障害となる要素は、大きく分けて3つ。
 空気抵抗、重力、慣性である。

 まっすぐ飛んで速度を出すのは、どんなウィッチでも、どんなストライカーでも、さほど難しいことではない。
 もちろん限界以上の速度を出すことはできないが、逆を言うと、規定された条件下でただまっすぐ飛びさえすれば、カタログスペック上の最高速度を出すことは、誰にでもできるのである。

 だが、空戦では敵の存在と、先に挙げた3つの要素がそれを邪魔する。
 ロールするたび、曲がるたび、回避機動を取るたび、攻撃するたび、ウィッチは減速していく。
 それは決して変えることのできない、世界の理だ。

 高速で飛ぶネウロイに、エイラがぴったり追従していく。
 放たれる光線を、巧みに躱しながら。

 ニパの見立てでは、二者の最高速度はほとんど同じ。
 だから、攻撃を避けながら飛んでいるエイラの方が、どうしたって遅くなる。普通であれば。
 にもかかわらず同じ速度で飛び続けられるのは、エイラの飛行技術がそれだけ卓絶しているからだ。

 最適のタイミングでロールし、最適の角度で曲がることを、ただ繰り返す。
 全力運転する魔導エンジンから得た運動エネルギーを、極限まで高効率で運用すれば、おそらくはああいった飛び方ができるのだろう。

 だがニパは、そんな飛び方のできるウィッチを、エイラのほかには知らなかった。

 久方ぶりに見る彼女の空戦機動は、いささかも衰えてはいない。むしろ、より鋭さを増しているようにも見える。
 一度食らいついたなら、なにがあろうと決して離さない。
 獰猛さとしなやかさを合わせ持つ、肉食獣の飛行技術。
 そんな彼女の飛ぶ様は、まさに戦場における勝景だった。

 こんな真似、きっとイッル以外の誰にもできない──

 興奮と憧れの入り混じった表情を浮かべながら、ニパはエイラを視線で追い続けた。

 ネウロイによる攻撃の手がゆるむ。次いで大きく弧を描くように曲がり始めた。小刻みな舵取りをやめて速度で優越し、エイラを振り切ろうという腹なのかもしれない。
 ネウロイとエイラの距離が少しずつ、しかし確実に離れていく。

 ネウロイは攻撃を完全に止めて、いまや加速に全力を注いでいる。──そのように、ニパの目には見える。
 だが、ネウロイにもし考える頭があったなら、この状況が異常であるとすぐに気付いたはずである。
 なぜならエイラは、"ここにいたるまで一発の銃弾も放っていない"のだから。

 ネウロイが"それに"気付いたとき、既に仕込みは終わっていた。
 進行方向の左方にサーニャ、右方にニパ。
 直進するにはふたりの間を抜けなければならず、曲がって避けようにも後ろからエイラに追い立てられている。そもそも現在の速度では、進行方向にいるふたりを曲がって避けるなど不可能だ。
 敵の目前で高度を上げるなど言語道断であるし、雲海のなかへ逃げ込んだところで広域索敵からは逃れられない。
 だからネウロイは、直進するしかなかった。
 それが罠だと気付いていても。

 先に動いたのはニパだった。
 自身の右方を抜けるべく飛翔してくるネウロイに、所持するMG42の銃口を向けてトリガーを引く。銃身で加速された7.92mmライフル弾が刹那に音速を超え、毎分1,200発というすさまじい発射速度で撃ち出される。標的の速度と進行方向、後退している自分との相対距離の推移、現在の風速及び風向きを計算に入れて放たれたそれは、あやまたずにネウロイの胴体へ吸い込まれ、外殻を破壊し削り、雪のような飛沫を散らせた。

 痛みにあえぐようにネウロイが吼える。

 赤いタイルが怪しく光り、次の瞬間光線が放たれた。一挙に10条。それがネウロイの眼前一点に収束し、まとめて撃ち出される。これまでの光線を機関砲の射撃とするなら、それはさながら艦砲射撃。絶大な威力を有するであろうその巨砲が、立ち塞がるものすべてを薙ぎ払わんとウィッチたちに迫りゆく。

 それをニパは、たったひとりで受けとめる。

 大口径の光線よりもさらに巨大に展開された防御シールドで、ネウロイの攻撃を完全に防いでいる。止めきれなかった余剰エネルギーが、シールドを中心として放射状に広がっていき、闇に沈みつつある空を薄赤く染め上げた。

 暮れゆく空に大輪の赤花が、禍々しくも美しく咲きほこる。

 ニパは、戦績を見れば誰もが認めるほどに優秀なウィッチだが、彼女の真価はそのようなところには、書類に記せるような部分にはなかった。
 彼女の真に優れた能力。それは"生来の魔法体質"にある。

「うっ、おぉぉぉぉっ!」

 ニパが吼える。
 目の前で文字通りに火花を散らす強大無比な火力を睨みながら、恐怖からでも高揚からでもなく、冷却された戦意によってニパは吼える。

 エイラのように予知ができるでも、サーニャのように広範囲の索敵ができるでもない。
 ニパの固有魔法は、任意に使うことのできない不便で不都合なもの。あるいはそのように言うこともできるかもしれない。

 しかし、それがあるゆえにニパは被弾を恐れる必要がなかった。
 理由こそエイラとは180度異なるものだが、結論としてニパは、彼女と同じく被弾を恐れず戦うことのできる稀有なウィッチだった。

 赤一色に染め上げられたニパの視界が、一転して薄闇に包まれた。ネウロイの攻撃が止んだのだ。
 自ずから攻撃をやめた──そのように都合のいいことがあるわけはない。だから攻撃が止んだのには別の理由があり、ニパはそれをすぐさま理解できた。
 ネウロイの外殻が弾け飛び、連なる電動ノコギリのような撃発音が遅れて耳にとどく。ニパのものではない。ということはつまり、ネウロイの後方から追従しているエイラの放ったものだった。

 その攻撃に重ねるように、サーニャが大仰な四角柱を肩に構えて引き金を引いた。

 空対空ロケット発射装置、通称「フリーガーハマー」。カールスラントのヴェーラ・フォン・ブラウン博士の研究をもとに、ノイエ・カールスラントの技術省に勤めるウルスラ・ハルトマン中尉が開発した、対大型ネウロイ用の切り札である。

 連続して撃ち出された5発のロケット弾は、侵攻するネウロイ前方を囲むように展開し、至近に達したところで爆発した。対ネウロイ用に特殊な魔法処理を施された炸薬が瞬時に燃焼し、暴力的なまでの破壊を生み出す。衝撃波によって直下の雲に大穴が開き、ネウロイの胴体が木の葉のように舞って直上へと押し上げられる。

「ニパっ!」

 インカム越しのやや乱れた音声で、エイラが叫ぶ。

「わかってるっ!」

 応えたニパは、ストライカーにありったけの魔法力を注ぎ込んで上方のネウロイを目指す。搭載されたDB605型魔導エンジンは与えられた魔法力を底なしに嚥下するかのごとく飲み込んで、そのすべてを加速力へと転化する。先ほどの爆発による衝撃波を目をすがめてやり過ごし、上昇の頂点に達して自由落下に移りつつあるネウロイの、外殻の隙間から見える真紅のコアを、構えた機関砲で一分の狂いもなく撃ち抜いた。

 その瞬間、百枚の窓ガラスを一度に砕いたかのような大音響と共に、ネウロイの体は幾多の白いかけらとなって飛散した。

 終わった……
 張り詰められた糸のような緊張がほどけ、ニパの全身からふっと力が抜ける。
 ネウロイが千々に砕けて消失していくのに伴い、作戦を成功裏に終わらせたという充足感が胸に満ちていく。
 いつもなら、そうなっていたはずである。

 何気なく視線を送ったエイラの方へ、いまだ質量を失わぬ破片の幾つかが向かっていることに気付いたのは、本当にただの偶然だった。
 ゆるめた気持ちが瞬時に凍結し、次の刹那には火薬のように燃え上がった。
 頭より先に、体が動いていた。
 主の請いに従って、猛り狂うかのごとき唸りを上げて回転する魔導エンジン。またたく間に近付くエイラの姿。驚きに目を見開く彼女の相貌。それらをコマ送りのようにニパは知覚している。
 ほとんど体当たりに近いかたちでニパはエイラに抱きつき、コンマ2秒ほど遅れて痛烈な衝撃が背中を襲った。シールドを展開する暇もなかった。

 まず来るのは衝撃。次に違和感。その次に熱さ。
 痛みを感じるのは、いつも最後だった。

「っ、ニパ!」

 ニパの体を抱きとめながら、エイラが切迫した声を漏らす。

 空戦時において、エイラとの関わりのなかで生じた結果は、"そうならざるを得なかった"ゆえに意図して導かれた未来と解釈することができる。
 エイラは、自分に関しての危機的状況を、未来予知によってなかば自動的に回避し、より生存の可能性が高い方へ導こうとする。
 つまりニパが今とった行動は、「こうなった」という結果がある時点で「エイラにとって最善の未来だった」と言い換えることもできるわけだ。
 ニパはその事実に安心し、満足した。

 弛緩した意識のなかで、ストライカーの魔導エンジンがうんともすんとも言わないことに気付く。
 壊れてしまったのかもしれない。
 そうだとすると、整備班長にまた怒られる羽目になる。

 でも、イッルを助けることができた。
 抱きつくようにしてすがっている体に、どうやら怪我はないようだ。
 ならばそれでいい。
 ニパはひとり納得し、薄れゆく意識に身をゆだねる。



 遠くなる五感の向こうで、誰かが、おそらくはイッルが何事か叫んでいるような気もする。
 そういえば、先ほどから妙にふわふわしている。これは飛んでいるというよりも、落ちているような──



「────おいっ、ニパっ! 目を覚ませ! わたしのストライカーまで止まっちゃったんだって!」
「………………えっ」

 ようやく一言、ぼそりとつぶやく。

「落ちてるんだよ、今! ふたりして墜落してる真っ最中!」
「そうなのかあ」
「そうなのかあ、じゃないだろ! せめておまえの魔力がないと、このままじゃ地面に激突だ!」
「わるいけど、もうむり、いしきが、もたな……」
「おいぃぃぃっ!」
「いっる……あとは……たのんだ……」
「なに映画の主人公みたいなこと言ってるんだよぉ! ちくしょうっ、もおぉっ!!」

 ここまで必死なイッルなんて、なかなか見られるものじゃないな……
 そんなことを思いながら、今度こそニパの意識は暗転した。


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