2010年11月18日0時11分
終わりに近づいたNHKの「龍馬伝」で、土佐を脱藩した下士の龍馬が藩主の山内容堂に大政奉還の建白書を書くようにと促す場面があった。厳しい身分制度や幕藩体制などの時代常識を打ち砕いて、「人間は皆平等」という人間観に基づき、列強と対等にわたり合う国づくりを使命として生きる龍馬の気迫と、先見の明はありながらも混乱無く、と転換の時を探ってきた山内容堂の決断。そこには今の日本が、再生のために必要としていることがあると実感する。
確かに日本は世界の大変動に立ち遅れている。しかし、国際競争の条件変化や円高などが原因であるとしても、お金やシステムなど、人間の外側の条件を変えて対症療法を重ねる従来の常識では、思い切った転換はできない。経営においても、人々や社会の痛みや必要に応える意志や誠意、それが引き出す知恵や工夫など人間の「内側のポテンシャル」を発揮することによって開かれる可能性は想像を超える。
社員をコスト扱いするのではなく、一人ひとりの成長の可能性を信じて引き出そうとする経営者は、社員を元気づける。互いに個性を生かし合って生まれる活気が新しい商品やサービスの開発、ひいては企業業績の改善につながる。それはそういうかかわり方を実践している経営者たちの実感である。
経営だけでなく、多くの分野で、人間から生きがいや志を失わせ、根なし草にしてきたこれまでの常識の転換によって、活性がよみがえり判断力や創造力において何倍もの力を発揮できる道が見え、それを生きる人たちが増えてゆくならば、出口なしと言われる日本の再生にもきっとつながると思われる。(瞬)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。