2010年11月16日12時47分
円の面積の求め方は「半径×半径×円周率(3.14)」。これは、小学5年生で習う。
今から3年前、全国学力調査で、岩手県内の小学6年生のうち23.9%が、円の面積を求める問題の正解を出せなかった。
そして今年。彼らが中学3年生となり、再び全国学力調査を受けた。そこで出された問題は、円柱の体積の求め方。「円の面積×高さ」が正解だが、県内の誤答と無回答を合わせると67.8%となった。誤答のうちの約3割が、円の面積を求めるところで円周(直径×円周率)を求めていた。
小6で理解しなければならないことをおろそかにしたまま、中3になっている生徒が多いことが、推測される。
この傾向は全国的にも見られることだが、岩手はより深刻だ。
全国学力調査は、小6と中3を対象に、国語と算数・数学の2教科(Aは基礎、Bは活用)で行われる。
過去4年の調査を見ると、小6の正答率は全国平均以上だが、中3になると平均を下回るのが、岩手の特徴だ。今年度の成績(表参照)では、小6は算数B以外は平均以上だったが、中3では国語A以外は平均を下回った。
「小学校から中学校へのホップ・ステップの接続がうまくいっていないのでは」と指摘するのは、教育雑誌「蛍雪時代」の元編集長で、学力問題に詳しい代田恭之さん(78)。小学校の時は良かった成績が学年を追うごとに下がっていくことを、代田さんは「小中学校間のねじれ現象」と呼んでいる。
特に問題なのは、算数・数学。今年の中3が小6だった時、算数Aの正答率は83.7%(全国平均82.1%)で全国10位だったのが、今年の数学Aは45位だった。
「数学は系統性がはっきりした教科。積み重ねることが大事」と話すのは、盛岡市教育委員会で算数・数学を担当する金野治指導主事。その積み重ねが順調にできているとはいえない。
環境が変わる中学に上がる時に、勉強についていけなくなる「中1ギャップ」。これをなくすため、県内の小学校では新たな取り組みをするところも出てきた。
北上市にある市立黒沢尻北小学校。全国学力調査の活用法として、正答率の低かった問題を繰り返し解く「復習」に、力を入れるようになった――。
◇
全国学力調査で、小学校から中学校へのつなぎの悪さが判明した岩手。現場はどう受け止め、どう対処しているのか。毎年、全国上位に入る隣県・秋田の取り組みとともに、紹介します。
(5回連載で、牛尾梓が担当します)
◇
〈全国学力調査〉 正式には全国学力・学習状況調査。小6の国語と算数、中3の国語と数学の2科目で、基本を問う知識をA、実生活で使えるかを試す活用をBとして実施している。
2007年、全国一斉テストとしては43年ぶりに再開され、毎年4月に行われている。09年度までは原則全員参加だったが、今年度から全体の3割を取り出す抽出方式に切り替えられた。