今でこそ、八十数キロの体重を持て余しているが、小さいころはやせたちびだった。そのくせ、食い気は旺盛。がつがつ食べるから、戦前生まれの姉たちは「欠食児童みたい」とからかった。
欠食児童。今の若者たちは知らない言葉だろう。食を欠かさざるを得なかった子供たちだ。
土門拳の写真集「筑豊のこどもたち」には、学校に弁当を持っていけず、昼食時間には食事をする同級生の方を見ないように、必死に絵本をのぞき込む子供たちの写真がある。撮影は59年暮れ。筑豊では燃料の石油転換で炭坑の閉山が続いていた。写真集を見ると、飽食の今の世を幸せと感じるより、そのもろさを思う。(栗栖)
毎日新聞 2010年10月7日 地方版