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経済ナビ:「来年のAPECまでにTPP妥結」 閉幕直後、米大統領が提案

 ◇早期決断迫られる日本

 横浜市で14日まで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で菅直人首相は「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」関係国との協議開始を決めた政府方針を説明し、TPP参加への意欲を国際的に表明した。「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現」をうたった首脳宣言を議長としてまとめた首相は「平成の開国」の必要性を訴えたが、TPP参加には農業団体などの反発が強く、今後は難しい判断を迫られる。(5面に首脳宣言要旨、9面に特集)

 「TPP交渉は来年11月にハワイで開催するAPEC首脳会議までに妥結したい」。APEC首脳会議の閉幕直後、横浜市内のホテルで開かれたTPP首脳会合。オバマ米大統領の提案に、交渉中の残り8カ国の首脳らも同意し、オブザーバーというあいまいな立場で出席した菅首相は各国から「できるだけ早い機会に参加を」と促され、「早期決断」を迫られた。

 TPPは関税100%撤廃を原則とし、TPPに参加すると、農業への打撃が懸念される。政府は、農業強化を目指す「農業改革の基本方針」を来年6月に策定する考えで、仙谷由人官房長官はTPP参加の判断を来年6月前後との見通しを示している。だが、農業団体や民主党内の反対論は根強く、日程通りに運ぶ保証はない。

 一方、自動車や電機で日本のライバルの韓国は、米国や欧州連合(EU)との自由貿易交渉で先行し、経済界からは「国益を総合的に判断した場合、TPP参加以外の選択肢はない」(日本経団連の米倉弘昌会長)との声が強まっている。TPPを主導する米国が妥結時期を明示したことでTPPのルール作りが加速し、参加が遅れるほど、日本は不利な立場に立たされ、高成長が続くアジアでの貿易自由化の流れに取り残されかねない。

 オバマ政権は、アジアへの輸出拡大で米国経済をテコ入れしたい考え。雇用低迷が響いて、中間選挙で与党・民主党が惨敗したオバマ政権としては、ハワイでのAPEC首脳会議でTPP交渉を妥結し12年の大統領選に向け、成果をアピールしたい意向とみられる。

 菅首相は、APEC首脳会議後の会見で「弱くなっている農業を活性化し、やや立ち遅れてきた自由化の促進を『平成の開国』という形で推し進める」と強調。政府は15日、「アジア太平洋自由貿易圏・経済連携協定のための閣僚会合」の新設を決め、TPPに向けた国内環境整備へと乗り出したが残された時間は少ない。【立山清也、赤間清広】

 ◇「米中対立」、政策協議を左右

 APEC首脳会議とその直前に開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議は、米国と中国の両経済大国の主張が対立し、地域経済統合や世界経済の不均衡是正の具体策に踏み込めなかった。主導権争いを演じる米中の関係が多国間の政策協議の行方を左右する構図が鮮明となった。

 APEC首脳宣言は「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現」をうたったが、FTAAPの基礎は、TPP▽ASEAN+3(東南アジア諸国連合と日中韓)▽ASEAN+6(ASEAN+3とインド、オーストラリア、ニュージーランド)の三つの枠組みを併記し、FTAAPの実現時期も明記できなかった。米国がTPPを主導するのに対し、中国は「ASEAN+3」を足場に影響力を強めることを狙っており、米中の溝が埋まらなかったためだ。

 TPP交渉に参加する9カ国は来年11月までの交渉妥結で一致し、米国は構想段階にとどまる「ASEAN+3」に大きく差をつけ、地域経済統合の主導権を握りたい考え。だが、中国が反発を強め、統合の道のりが険しくなることが予想される。

 また、11、12日にソウルで開かれたG20首脳会議では、世界経済の不均衡是正策として、過度の経常黒字、赤字を縮小するための「参考指針」で合意できるかが焦点だったが、「11年前半に指針策定」と先送りされた。巨額の経常赤字を抱える米国が策定を目指したのに対し、中国は「経常黒字圧縮に向け、人民元の大幅切り上げを迫られる」と警戒を解かなかったためだ。

 オバマ政権は12年の大統領選までに中国から譲歩を引き出し、輸出主導で米国経済を回復させたい考え。だが、中国は、2年後に胡錦濤国家主席から習近平国家副主席への権力継承を控え、波乱要素は避けたい。リーマン・ショック後、先進国の地盤沈下と新興国の高成長を背景に米中関係の重要性が増したが、国内事情から相手国への妥協が難しく、国際的な政策協調に影を落としている。【斉藤信宏】

毎日新聞 2010年11月16日 東京朝刊

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