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【変わる大阪駅】(1)上空を生かせ 広場やジオラマ…滞在型へ2100億円
JR大阪駅のホームに立ち、見上げると、灰色にくすみ、老朽化した屋根が目に飛び込んできた。しかし約半年後、この風景は劇的に変わる。
現在の屋根はすべて取り払われ、ホームは波打つドーム形の屋根に覆い尽くされることになる。新しい大阪駅の「顔」となるこの屋根は東西180メートル、南北100メートルと、サッカー場2.5面分という大きさだ。
「今まで駅の上空は活用されてこなかった。画一的な駅から世界に誇れる駅にしたい」。JR西日本創造本部大阪ターミナル開発チームの宮崎博司課長はこう語気を強める。
来年春、大阪駅には宮崎さんの言う“駅の上空”を活用した南北を結ぶ新たな動線が出現する。ホームの上空を横切るように、駅の北側と南側に立つ「ノースゲートビルディング」(来春完成)5階と、「サウスゲートビルディング」(現アクティ大阪)6階をつなぐ“空中”広場「時空(とき)の広場」(広さ3千平方メートル)で、解放感ある巨大通路となる。さらに、この広場の下には橋上駅舎が作られ、ここもJRの乗降客などが南北に行き来できる通路が確保される。
大阪駅の乗降客数は1日約85万人。東京の新宿、池袋、渋谷駅に次ぐ巨大ターミナルだが、「長時間たたずむことのできる空間は少ない」と同駅を利用する40代の会社員はこぼす。
このため、新しい大阪駅には8つの広場が設けられる。地上22メートルの高さに作られた時空の広場もそのひとつ。広場から下をのぞくと列車をジオラマのように眺めることができ、ガラス張りの明るいドーム形屋根から光が降り注ぐ。
また、ノースゲートビル14階には「駅ビルでは日本で唯一」(JR西日本)といわれる農園が作られ、広さ1500平方メートルにトマトやサクランボなどが栽培される。従来の「駅」という概念は取り払われ、「小さな街のような駅になるのでは…」(鉄道関係者)。
来年3月には九州新幹線が開通し、大阪と熊本、鹿児島を直通で結ぶ列車の運転が始まる。「関西の玄関口としてだけではなく、関西の魅力を高める観光の拠点となってほしい」と宮崎さんは期待を込める。
新しい大阪駅は、大阪の街そのものを変える可能性さえ秘めている。
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来年5月、JR大阪駅が生まれ変わる。平成16年5月の着工以来、総工費約2100億円を投じた巨大ターミナルは、人の流れやビジネスをどう変えるのかを探った。
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【用語解説】JR大阪駅 明治7年に官設鉄道の駅として開業。東海道本線、大阪環状線が乗り入れ、1日の乗降客数は約85万人で西日本最大。石造りの2代目、コンクリート造りの3代目に続き、昭和54年に現在の4代目駅舎が完成。来年4月に開業する橋上駅舎で5代目となる。